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長らく音信不通になってしまい、ご心配をおかけしましたこと
深くお詫び申し上げます。
11月に元気な女の子を出産し
賑やかな毎日を送っています。
4月からは職場復帰、我が子は保育園入園を控えており
ほとんど執筆できない状況にありますが
突発でSSを書いてしまいましたので急きょUPすることにしました。
時間軸は第二次大戦後最初のバレンタインデーです。
筆者のお話ですので、やっぱりアスランとカガリは恋人の関係ではありません。
互いに思いを伝えあうことも出来ないような関係です。
それでも2人らしく、笑顔で終われる結末を用意しております。
3~4話完結の予定ですので、できるだけ間隔を置かずにUPしたいと思います。
バレンタインデーは過ぎてしまいましたが
お楽しみいただければ幸いです。
お話はこちらから
xiaoxue
本っっっ当に暇ネタですが(笑
それでもお付き合いくださる方はRead more…以下へ!
この暇ネタに関する感想は大歓迎ですが、
クレーム等は受け付けませんので自己責任でご覧下さい。
【Attention!】
お話の中にシン○○的な発言が出ます、ムゥから。(関係性を決定付けるものではありません)
シンの趣味がちょっとアレ的な発言も出ます、ムゥから(笑。
なので、「シンルナ以外のカップリングは嫌!」又は「シンはカッコイイ方が好き!」という方は
今回はスルーしてください。
「で、これがマユが幼稚園生の頃の写真で・・・」
いつの間にか、本来の目的から外れ
シンが保存していた写真データを見る会になり
「マユちゃん、マジでかわいいな。
そりゃ、シンがシスコンになるのも分かるわ~。」
「べっ、別にシスコンって訳じゃっ。」
兄貴肌のムゥと、もともと人懐っこいシンは波長が合ったのか
話が盛り上がっていく。
「お前は全っ然、変わんねぇな。
同窓会で会っても違和感無いタイプ。」
子どものまま成長していないような意味で捉えたシンはあからさまに顔を歪ませた。
「これでも、随分変わったんスよっ。
昔は女の子に間違えられたけど、背だって伸びたし、体だって鍛えてるし。」
ブツブツと小言を垂れるシンに、ムゥは笑みを零しながらシンの背中を叩いた。
「確かに、お前のガキの頃の写真、マユちゃんにそっくりで超絶カワイイもんな!」
「それ、俺とマユを馬鹿にしてんだろ!」
簡単にムキになるシンの姿が、さらにムゥの笑いを誘い
ひーひー言いながら写真をめくっていく。
「や、でも、キラとアスランの子どもの頃の写真もヤバいぜ。
めっちゃくちゃカワイイ、つーか女の子が可愛そうな位。」
シンはぼんやりと想像を巡らせた。
キラはクス・クラインというフィアンセが居ながらも驚異的な早さでファンを増やし続けているのだ。
それこそ、小さな子どもたちから高齢者まで。
「確かに…、キラさんの目、丸っこいし、
プラントでは“プリンス”とかいわれる程人気だし。」
と、言いながらミニキラを想像してみる。
人懐っこい笑顔とか、めっちゃカワイイんだろうなぁ。
つーか、抱っこしたい。
“高い高い”が好きそうだな、なんとなく。
晴れた日に公園に遊びに行って、チョロチョロ何処かへ走って行っちゃうミニキラを捕まえて、
空に向かって高く抱き上げて・・・
ニコっと笑って“お兄ちゃ~ん”とか呼ばれたら、
むぎゅ~って抱きしめちゃうだろっ!
キラの髪色のせいか、いつの間にか幼い頃のマユの姿と重なり
シンは幸福な妄想を広げていた。
「アスランは…。」
と、言いながら今度はミニアスランを想像して2秒…
シンは口元を手で覆った。
――やばい、めちゃめちゃカワイイんじゃ・・・。
一緒に公園とか行って、
危ないからって手を繋いで、
はにかんだ顔で“お兄ちゃん、ありがとう”なんて言われたら…。
ヤバイヤバイヤバイっ。
抱っこなんてもっての他だ、
連れ去ってそのまま…
「つーか俺、何想像してるんだぁぁ!」
顔を赤らめながら叫び出したシンに、ムゥはニヤニヤとした笑みを浮かべた。
ムゥは、このネタで何回シンをいじれるだろうかと考えるだけで笑いが止まらなかった。
「想像を絶する可愛さだぜ。
まぁ、本人は母親譲りの女顔がコンプレックスだったらしいけど。」
と、マユの幼少期の写真のフォルダが終わり、ムゥは次のフォルダを開いた。
今度はもう少し大人になったマユの写真かと思いきや…
――ん?
フォルダに保存されていた写真は家族の写真ではなかったのだ。
シンを含めた家族以外が保存されているフォルダはこれだけである。
そのため、余計にムゥの目を引いた。
「これって・・・。」
ムゥの声で現実に引き戻されたシンは、大声を上げてタブレットを取り上げようとした。
が、コーディネーターをも凌駕するスピードでかわしたムゥは
ニヤニヤと笑みを浮かべながら写真を見ている。
「かっ、返せよっ!」
シンが手を伸ばそうとも、長身のムゥには届かず、
顔を真っ赤にしたままシンは無駄なジャンプを繰り返す。
その図は、まるで上級生が下級生をいじめているようだ。
極端に枚数が少ないフォルダの中を堪能しきった後、
ムゥはシンの目の前に写真を突き付けた。
「で、なんでカガリの写真が保存されてる訳?
しかもほとんど小さい頃のじゃん。」
タブレットを奪い返したシンは顔を赤くしたままそっぽを向いて答えた。
「・・・マユが好きだったんだよ。“オーブのお姫様だから”って・・・。」
シンは、それが真実である筈なのに言い訳じみた響きになってしまう事にぐっと奥歯を噛みしめた。
案の定と言うべきか、ムゥの顔から嫌な笑みは消える事は無く
“へぇ~”と抑揚の無い相槌を打ち、
爆弾を落とした。
「で、お前の初恋って訳か。」
爆弾の威力は想像を絶するもので、
シンは顔を真っ赤にしたままパクパクと口を動かしている。
さらにムゥの容赦ない追撃に
「ま、お前がロリコンって事はよぉ~っく分かったし。」
シンは撃沈する。
ムゥはここぞとばかりにダンディな声で“性癖は恥ずかしい事じゃないぜ”とシンの肩をポンポンと叩き
手をひらひらさせながら扉に向かった。
その足取りは今にもスキップしだしそうな程軽快だ。
「やべ~、このネタ、アスランとディアッカ達に報告しねぇと♪」
扉の一歩手前でムゥの肩を掴んだシンは一気に捲し立てる。
「だっ、誰が初恋はアイツだなんて言ったんだよっ。」
「隠さなくたって分かるさ~。」
大げさなジェスチャーでやれやれと言わんばかりのムゥは、シンの言葉に聞く耳を持たず
そのまま部屋を出る。
ムゥが落とした爆弾の衝撃に追いつかない体を思考に鞭を打ち、
シンはムゥを追いかける。
ここで誤解を解かなければ・・・
――ヤバイっ!
何かが確実にヤバイ!!
シンは己の名誉と尊厳が打ち砕かれる恐怖を感じていたのだ。
頭の中で反芻するのは、
ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべたディアッカの声と
“へぇ、お前ロリコンなんだ。良い店紹介するゼ・・・”、
あからさまな軽蔑に顔を歪ませたルナと、恐怖に潤んだ目で見詰めるメイリンと、
無表情のまま俺の腕をへし折りにかかるアスラン・・・
気付くとシンは廊下に出て、遠ざかるムゥの背中に向かって叫びを上げていた。
「俺は、ロリコン・・・っ!」
「え?」
第三者の声が背中から聴こえて、まるで氷で撃ち抜かれたようにシンは身動きできなくなる。
無理矢理首を動かせば、冷や汗が一気に背中を流れ落ちた。
そこには、困惑した表情を浮かべたヴィーノが目を泳がせていた。
――ごっ・・・誤解されたぁあああああ!!
「ヴィーノ、待て、誤解だ!」
しかしそれは声になる前に、
先を行っていた筈のムゥが何時の間にかヴィーノの肩を抱いていた。
ムゥは青白くなったヴィーノに、人生の先輩として優しい響きの言葉をかける。
「びっくりする・・・よな。
でも、シンの事、受け入れてやろうぜ。」
「・・・ムゥさん・・・でも、俺っ。」
「世の中にはな、色んな男がいるんだよ。
熟女好きもいれば、小さな女の子や男の子が好きなヤツもいる。
動物に興奮するヤツだっているんだぜ。」
ぎゅっと目を閉じ意を決したヴィーノはシンに向きあい、右手を差し出した。
「俺、時間かかるかもしれないけど・・・、
シンのこと・・・受け入れるからな!」
シンの絶叫が響いた事は言うまでも無い。
* * *
え~、全くの暇ネタでしたがいかがでしたか?
皆様の暇潰しに少しでも貢献できたのなら幸いです。
シンがロリコンかどうかは置いておいて、
実際にシンは小さい子の面倒見が良さそうだと思います。
ちょっとぶっきらぼうな所はありますが、根は素直で優しいヤツですから。
子どもたちと一緒に日が暮れるまで泥だらけになるまで遊んでくれそう。
だから、マルキオ様の孤児院に行ったら人気者になりそうだと思います。
(とても平和な絵が浮かびますので、そんなお話も書けたらいいんですけどね。)
で、相変わらず年上にいじられるシンですが(笑。
シンの初恋がカガリだったと言うのはムゥの勝手な発言ですが(笑、
“マユちゃんがカガリを好きだった”という設定は無い話ではないかと思います。
オーブのお姫様に子どもたちが憧れを抱いたとしても不思議では無いので。
で、もしもマユちゃんがカガリに(又はお姫様という存在に)憧れていたなら、
シンもまたカガリに対して嫌な感情を抱いては居なかったと思います。
むしろ、好感を持っていたのではないでしょうか。
だからこそ、家族を戦争で失くし、アスハに対する憎しみが大きくなった・・・
なんて事も無い話じゃないと思います。
最後に、シンの誤解が解け、
というか、この噂がディアッカやルナ、アスランの耳に届かないと良いのですが(笑。
届いちゃったら面白い事になっちゃうので(笑。
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こんにちは。
カガリBirthday記念SSをお読みくださり、ありがとうございました。
大変長くなってしまったこと、さらに3話完結と言っておきながら
第4話まで引き伸ばしてしまったこと、深くお詫び申し上げます。
実は、カガリの誕生日にあわせて何かSSをと考えておりましたが、
直前まで何も浮かばず・・・、かなり迷った作品です。
今回は、このセリフをアスランとカガリに言わせたくて書きました。
「姫はわたくしめに、
何をくださるのでしょう。」
「私のまごころを・・・あげる。」
まごころあげちゃうのかよ、姫!
そんな甘い空気を壊すのは、やっぱりキラ兄様とラクス様でして(笑。
キラとラクスの花嫁大作戦や、
ムゥとマリューのサプライズパーティーに、
4人共謀のアスラン・カガリ密会大作戦など、
数々の大人の悪戯はいかがでしたでしょうか?
筆者的にはムゥの
『ベッドは狭いけど、音が響かないタイプのスプリングだから安心しろよな。』が、
一番びっくりしましたが(笑。
こうして見てみると、アスランの悪戯なんてほんと可愛いものですね。
そして、一番最後に式典の描写を入れました。
実はこれが、カガリの悪戯だったりします。
最後になりましたが、筆者の拙い文章をお読みくださり、
そして拍手を送ってくださり、心から感謝申し上げます。
今後とも、ゆっくりではございますが物語りを綴ってまいりますので、
お時間がある時などに訪れていただければ幸いです。
本当に、ありがとうございました。
xiaoxue
カガリBirthday記念 アスカガSSの第4話です。
ようやく完結いたします。
物語はこちらからをクリックしてお読みください。
今回はアスランとカガリが、ちょっぴり甘い時間を過ごしています。
また、カガリの大胆発言(!?)も出てきます。
アスラン視点から物語が始まります。
そのため、第1話~3話の中でぼんやりと描かれていた
大人の悪戯が明らかになります!
そして、最強のカップルも登場です(笑!
今回は少し長めですが、最後までお付き合いいただければ幸いです。
では、アスランとカガリとキラとラクスの幸せな誕生日を祈って。
皆様との出会いの契機となった、この日に感謝して。
xiaoxue
重なる想いを抱きながら、
2人は手を繋ぐことも
手を伸ばすことすら許さずに、
想いを縛め続けてる。
同じ夢を叶える為に。
そんな2人に
奇跡の欠片を贈ろう。
大人の悪戯で。
アスランは胸に支えた息をゆっくりと解きながら、
シャンパングラスを傾けた。
ハチミツ色に煌く気泡に、無意識に今を重ねてしまう。
久しぶりに見たありのままの君と、
浮き立つ気持ちを抑えきれない自分と。
視線を隣に傾ければ、
かすかに頬を染めながらやさしくコサージュを撫でるカガリがいた。
過去と今は違っても、
過去と変わらぬ想いを勝手に抱き続けている自分が
過去と同じものを贈っていいものか、
アスランは随分と悩んだ。
迷惑ではないか、と。
しかし、過去と今の狭間で立ちすくむ自分の背中を押してくれたのは
キラとラクスと、ムゥとマリューだった。
ムゥからの強制的な誘いは、カガリの誕生日の2週間前だった。
『カガリのバースデーパーティーやるから、必ず来いよ。
5月17日の夜11時半からな。
え?時間が遅すぎるって?
誕生日はカウントダウンするもんだろ~!
あ、それからプレゼント持参でな。
いいか、“食べ物以外”のプレゼントだぞ!』
今は恋人という関係では無いのだから、カガリの誕生日を祝うことすら出来ないだろうと、
覚悟を決めていた時だった。
2人で過ごすことなんて、きっとこの先何年も、
もしかしたら叶わないまま終わるかもしれない。
だけどせめて、おめでとうの言葉だけでも伝えることができたら、
素直に嬉しいと思う。
嘗て共に戦場を駆けた戦友としてでも、
同じ夢を実現する同志としてでも、何でも構わない。
ただ、伝えることができれば、それでいいと思った。
が、何を贈ったらいいのかと悩んだ時、
怖いほどにタイミング良く、キラとラクスから通信が入った。
『カガリの誕生日にアスランから渡してよ。
僕たちの育てた花で作ったブーケ、そっちに送るから。』
『お花を余分に送りますわ。
コサージュでしたら、カガリも気軽に受け取ってくださるのではないでしょうか。』
なんで俺の悩みも、そもそもカガリと会う機会があることすら知っているんだ?
そんな疑問も湧いたが敢えてスルーすることにした。
が、やはり天下無双の2人である、これで会話が終わるはず無かった。
『あ、それから何か“残るもの”もプレゼントしてね。』
『カガリがお喜びになるものを。』
ハードルを上げたまま無情にも通信を切られ、アスランは呆然とした。
が、立ち止まっていても時は過ぎていくから、
なんとか手を尽くしてパーティー当日を迎えた。
しかし、ムゥから告げられた時刻通りにフラガ家と訪れれば、
ソファーにちょこんと座ったカガリとアスラン以外に招かれた客は無く。
ハメられたのだと、確信した。
『どういうことですかっ。』
怒りを抑えきれずに問えば、ムゥはそんなアスランの肩を乱暴に引き寄せ、耳打ちした。
『2人で客間に泊まったらいい。
ベッドは狭いかもしれないけど、音が響かないタイプのスプリングだから安心しろよな。』
『なっ!』
アスランは頬を染めて息を呑み、ムゥはニヤニヤと悪戯っぽい笑みを浮かべていて、
頑張れよと言わんばかりに肩を叩いてきた。
そんなアスランとムゥのやり取りに、カガリはきょとんと瞳を丸くしたまま首をかしげた。
『なぁ、何だぁ?』
そんなカガリの無垢な問いに、ムゥは爆弾を落とした。
『俺とマリューからの、
誕生日プレゼント!!』
――何が誕生日プレゼントだ!!
と、その時は内心で総ツッコミを入れたアスランであったが。
「ふふ。いい香だな。」
今、隣では小さなティアラをのせたカガリが、ブーケに顔を寄せては無垢な笑みを零している。
純白のワンピースに胸元の淡い色彩の花々が清楚に映えて、
綺麗だと思う。
自分が贈ったものを、想う人が身につけてくれるということ、
そんな小さな独占欲から来る喜びを、
日付が変わるまでの時間だけ許そうと、アスランは思った。
あと、もう少しだけ。
「それから。」
そう言って、アスランは掌を広げた程度の大きさの箱を取り出し、
長い睫を瞬かせながら見詰めるカガリの前に差し出して
「暇な時にでも、楽しんでくれたらと思って。」
そっと箱を開いた。
すると、
白い機会鳥が勢い良く飛び出して、広いリビングで翼を広げて旋回した。
平和の象徴であるハトをモチーフにした機械鳥は、翼にピンクのラインが入っている。
ストライクルージュと同じ配色で。
「う・・・わぁ!」
カガリは両手でつくった小さな拳を震わせて天井を見上げている。
身を乗り出して、ソファーから落ちそうな勢いだ。
気に入ってくれただろうか、アスランは不安に揺れそうになる視線を戻して、
軽く手を挙げ、白い機会鳥を呼び寄せた。
アスランの手の上にのる白い機会鳥は、じっとカガリの目を見詰めては首をかしげている。
一方のカガリは緊張しているのだろうか、少し頬を上気させている。
そんなカガリのありのままの表情に、アスランは笑みを零した。
「さ、カガリ、
手を出して。」
アスランの声に誘われるように、カガリはゆっくりと手を差し出した。
すると、機会鳥はアスランの手からカガリの手へと、軽やかに飛び移った。
カガリは機会鳥と真直ぐに向き合うと、ふわりと微笑みを浮かべた。
「お前、かわいいな。
名前は?」
「ポポッ!ポポッ!」
カガリは大きく頷くと、空いた手で機会鳥のくちばしを撫でた。
「よろしくな、ポポ。」
するとポポは応えるように、カガリの腕を伝って肩へ移動し、
甘えるように頬に擦り寄った。
くすぐったかったのであろうか、カガリは肩で跳ねる髪を揺らしてくすくすと笑みを零した。
カガリがポポとじゃれあっている、そんな様子に安堵して
アスランはローテーブルのシャンパンに手を伸ばした。
時計へ目を向ければ、あと数分で午前零時を迎える。
「良かった、気に入ってもらえたようで。」
「ありがとう、アスラン。
すっごく気に入ったぞ。
みんなに紹介したいくらいだ。」
そう言って、カガリは肩の上のポポを両手で包むと、ふわりと解き放った。
白い翼を広げて飛び回る姿に、カガリは自ずと半身であるキラへと想いを馳せた。
今頃、どうしているだろうかと。
本当は、キラとラクスと一緒に、
EPUにいるミリィたちと一緒に、
もっと沢山、みんなで楽しい時を過ごせたらいいのにと思う。
――きっと、いつか・・・。
「アスランも、パーティーに来れたら良かったのにな。
残業なんてしないでさ。」
カガリはちょこんと首を傾けて、アスランを見上げた。
そうしたらポポのこともみんなに紹介できたのに、とカガリは唇を尖らせた。
アスランは、ムゥから嘘の開始時刻を聞かされていたとは言い出すことが出来ず、苦笑した。
しかしカガリは、そんな裏事情を知る由も無い。
「みんなさ、色んな料理を持ち寄って、分け合って。
まるで式典の前夜祭みたいだったんだぞ!」
特に、コル爺お手製ケバブが最高だったんだと熱弁するカガリに悟られないよう、
アスランは溜息を飲み込んだ。
これで理由が分かったのだ、何故ムゥがアスランに“プレゼントは食べ物以外”と指定したのか。
しかしこの時のアスランは気付かずにいた、ムゥの2つ目の意図に。
いやもっと、既に仕掛けられている大人の悪戯に。
そんなアスランを他所に、カガリはシャンパングラスを傾けて
部屋の照明にスパークリングを透かしながら続けた。
「どうしてご先祖様が、式典で貢物を民へ振舞ったのか、
その理由を、改めて実感したよ。」
煌く気泡を映したカガリの琥珀色の瞳に、突然重厚さが増して、
アスランは問い返した。
「理由・・・?」
カガリは花が綻ぶような笑顔を見せて、
ローテーブルに置かれたアスランのシャンパングラスに向かって
乾杯の仕草をした。
「ご先祖様はもらった気持ちを民へ還したかったんだ、きっと。」
アスランは、カガリの言葉に悠久の歴史を感じ取り、目を瞠った。
伝統を形式的に継承するのではなく、
自らのものとして体現し、想いと共に引き継いでいく。
カガリは人の手によって引き継がれてきた歴史あるこの国の姫なのだと、思い知る。
「そうか。」
そう応えて、
ふとアスランに小さな悪戯が浮かんだ。
カガリがシャンパングラスをローテーブルへ戻した時、
そのままアスランはカガリの手を取った。
突然の出来事に、カガリは驚いた瞳でアスランを見詰める。
「では、姫。」
畏まったアスランの口調に、カガリの胸が高鳴る。
触れ合った手に、熱が燈っていく。
カガリは無意識に空いた手をきゅっと握り締めて胸元に当て、
コサージュに触れた拍子に、優しい香に抱かれた。
「姫はわたくしめに、
何をくださるのでしょう。」
「あ・・・。」
カガリは息を呑んでたゆたう視線を瞼で伏せた。
パーティーに来てくれたみんなには、
みんなからの料理をみんなで分け合うことで気持ちを還すことができた。
でも今は。
カガリは視線を泳がせたが、見つかる筈が無い。
「私、アスランにあげられるモノ、何も持ってない・・・。」
カガリは吐息まじりの言葉と共に俯いた。
素直に胸を痛めるカガリに、アスランは胸の内で小さく“ごめん”と呟いた。
――だから俺にくれないか。
一番最初に、おめでとうを言う権利。
一年でたった一日しかない、特別な日の、
時計の2つの針が重なる瞬間に、
君と一緒に居られる権利。
今、この時だけ。
それはアスランの願いにも似た、小さな悪戯で。
しかし、カガリがきゅっと瞳を閉じてあまりに一生懸命考え込んでいるから、
アスランは苦味を帯びた微笑を浮かべて、
やんわりと取った手をほどいた。
そして、姫に告げようとしたその時――
カガリは解かれたアスランの手を取った。
離れていかないように、ぎゅっと。
アスランは息を呑み、触れ合った手から広がる熱に
用意していた言葉は消えうせた。
「私、アスランにあげられるモノ、何も持ってない。」
さっきと同じ言葉、
でも、終わらない言葉。
「だから・・・。」
カガリは顔を上げて、アスランと視線を重ねた。
瞳の中に、自分だけが映っている。
その奇跡に触れたくて、
違う、この時を奇跡にしたくて、
近づく距離。
「だから、私のまごころを・・・
あげる。」
心の糸を紡ぐような声で告げられた言葉。
鼓動が胸を打って、止まらない想いが駆け出すように
アスランはカガリの指を絡め取り引き寄せる――
“カガリ、それじゃぁ愛の告白だよ~。”
その瞬間、の一歩手前で、
何故かキラの声が響いた。
何故、何処からキラの声が聴こえてきたのかは分からない、
でも2人は手を繋いだまま、視線を重ねたまま、
アスランの身体は一気に冷え切って
一方カガリは一気に沸騰して、
そしてお互いの状況を一瞬で把握した。
「「うわぁぁぁぁぁ!!」」
2人同時に声を上げて距離を取り、
“もう、うるさいなぁ~。”
もう一度聴こえたキラの声に、
アスランは憮然としながらジャケットのポケットを探り、携帯端末を睨み付けた。
「キラっ!!
ハッキングで人のプライベート回線を勝手につなぐな!!」
端末のモードを音声から映像へと切り替えると、
案の定、朗らかな笑みを浮かべたキラとラクスがそこにいた。
キラがハッキングして、アスランの端末のプライベート回線を繋ぐことはたまにあるが、
今回ばかりは、背中に嫌な汗を感じずには居られない。
カガリとの会話が全て盗聴されていたとしたら・・・。
しかし、今は取り返せない過去よりもカガリを護ることが先だ。
視線を横へ向ければ、カガリは可愛そうな位紅くなった顔をブーケで隠している。
アスランは盛大な溜息をつくと、義理感のこもった声でキラに告げた。
「キラ、誕生日おめでとう。」
すると案の定、キラはぷりぷりと怒り出し
“親友なんだから、もっと大事にしてよね~”とか小言を呟き、
隣でラクスが鈴の音のような笑い声を上げている。
そんなほのぼのとしたやり取りに心がほぐれたのであろう、
カガリがそっとアスランの隣から顔を出した。
「キラ、おめでとう。
ブーケ、ありがとうな。」
はにかんだ微笑を浮かべるカガリに、
キラとラクスは顔を合わせて頷き、ハイタッチをした。
“やった~!”
“大成功、ですわ♪”
よく状況が飲み込めないカガリはきょとんと瞳を丸くして、
隣から見ていたアスランは、またしても嫌な予感に喉を鳴らした。
「え?なになに?
どうしたんだぁ?」
カガリが無垢な声で問えば、ラクスの爆弾発言が炸裂した。
“ブーケもコサージュも、とてもお似合いですわ。
まるで、花嫁のように。“
ラクスの言葉でアスランは確信する、全てはこいつらの仕業であると。
みるみる頬を染めていくカガリをよそに、キラとラクスの会話は続いていく。
“やっぱり、こっちのワンピースにしてよかったね。”
“はい、デコルテのラインがお美しいですし、
コサージュもほら、あんなに映えて。“
カガリは無意識にワンピースの裾をきゅっと握り締めた。
――もしかして、いや、もしかしなくても、
このワンピースはキラとラクスから贈られたもの・・・?
“キラが見つけてくださいましたティアラも、
ぴったりでしたわね。“
“うん、ピンクサファイヤがバラに合うかなって。”
――まてまて、これも?!
いや・・・と言うか・・・もしかして
「パーティーとか全部?!!」
真っ赤な顔のままカガリが叫べば、キラとラクスはゆったりと頷いて
言葉を加えた。
“パーティーはムゥさんとマリューさん企画だけど、
そこにちょこっと悪戯を、ね。”
と言って、キラがアスランに向かってウィンクし、
アスランは米神に手を這わせては溜息をついた。
カガリはキラの合図から、アスランも共犯であると勘違いしたのであろう、
キッとアスランに鋭い視線を向けると、
仁王立ちでビシっと人差し指を立て、宣言した。
「見てろよ~!
アスランの誕生日にも、い~っぱい悪戯してやるんだからなぁ~!!」
「え・・・あ、おいっ、誤解だっ!」
しかし、そんなアスランの言葉がカガリに届くはずもなく、
小さな花嫁は気合十分に拳を握り締めた。
“あらあら、キラ、カガリ。
もうすぐですわ。”
時計を見れば、もう間もなく0時を指すところ。
5、4、3、2、1
Happy Birthday to You!
式典当日。
カガリが纏ったラベンダー色のドレスの胸元には、
淡いピンクのバラのコサージュが指してあったという。
その胸に何を想い、何を抱いていたかは、
カガリだけの秘密――。
追記を閉じる▲
第3話です。
今回やっとアスラン登場です!
カガリの恋心を描いたつもりです。
物語はこちらからをクリックしてお読みください。
なお、3話完結の予定でしたがもう少しだけ続きます。
長くなってしまい、大変申し訳ございませんが、
お時間がある時にでもお読みいただけたら幸いです。
xiaoxue
来客を知らせるベルの音は、家主たちのように親しみに満ちた音で、
なのに小さく身体が跳ねる程、鼓動が胸を打ったのは、
心のどこかで願っていたからだろうか。
会いたいと。
ムゥは無造作に髪をかきあげながら“やっと来たな”と呟いて玄関へと向かい、
マリューは嬉しそうにキッチンへと向かった。
独りリビングに残されたカガリは、所在なさげにソファーに座った。
柔らかなソファーに身体ごと委ねるように沈みこんで、
意味不明に乱れた呼吸を取り戻す。
ムゥが言っていた“待つ”対象とは、この来客者のことであろうか。
リビングへと続く廊下からムゥの声が近づいてくるのが分かって、
予感か、それとも期待だろうか・・・、
無条件に心臓が忙しなく鼓動を打ち立てた。
マリューはキッチンから持ってきたシャンパンとグラスを
カガリの座るソファーの前のローテーブルに置いた。
その数は2つ。
カガリの目の前と、その隣。
マリューは洗練された手付きでシャンパンを注いだ。
心をくすぐるようなスパークリングの音を響かせて、シャンパングラスが満たされていく。
カガリはゆるゆるとマリューへ視線を向けると、
悪戯っぽい笑みを浮かべたマリューからウィンクを返された。
そしてガチャリと扉が開いた先に、
カガリは瞳を見開いた。
だって、会うことが出来ない人と思っていた人が
目の前にいるんだ。
手を伸ばせば届く程
すぐ傍に。
ブーケを持った、アスランが。
「アスラ・・・。」
求めていた名前は胸に支えて、うまく声にならなかった。
「カガリ・・・。」
アスランは、驚いた瞳をさらしてカガリを見詰めていた。
まるで時が止まったように動けずにいる2人を他所に、
ムゥはニヤリと口角を上げた。
「じゃ、俺達もう休むから。
戸締りだけ、よろしくな。」
そう言って、アスランのジャケットの胸ポケットに家のカギを落とした。
アスランは感情をすっ飛ばすような状況に、切羽詰った視線をムゥに当てた。
「どういうことですかっ。」
「え、見たまんまだけど。」
しかし、飄々と言ってのけるムゥに敵う筈はなく、
アスランは深い溜息をついた。
ムゥはそんなアスランの肩を乱暴に引き寄せ、何かを耳打ちする。
「なっ!」
アスランが頬を染めて息を呑み、
ムゥはニヤニヤと悪戯っぽい笑みを浮かべていて、
そんなアスランとムゥのやり取りに、カガリはきょとんと瞳を丸くしたまま首をかしげた。
「なぁ、何だぁ?」
そんなカガリの無垢な問いに、ムゥは爆弾を落とした。
「俺とマリューからの、
誕生日プレゼント!!」
来客して1分で、来客者を置いて寝てしまう家は
他に無いと思う。
ムゥとマリューがリビングを後にしてもなお、立ち尽くしているアスランと
見詰め合ったまま瞳を剥がせないカガリの間で、
シャンパンの繊細なスパークリングの音が響く。
カガリは、瞳はそのままにぎこちない手付きでソファーをぺちぺちと叩いた。
「とりあえず・・・、座れよな。
残業だった・・・んだろ?」
そう言葉を紡ぐので精一杯だった。
一方のアスランはくしゃりと表情を歪め、
「こんな筈じゃなかったんだが・・・。」
そう言って、眉尻を下げて笑った。
一歩一歩近づいてくるアスランに、
「え、残業じゃなかったのか?」
カガリがそう問えば、
「あぁ、残業はしていたよ。」
何処か曖昧さの残る言葉が返ってきた。
「なんだよそれ。」
それがおかしくて笑みを零せば、
アスランの穏やかな微笑みが返ってきて
止まらない喜びに満たされた。
「あ・・・。」
そんな、あまりに素直すぎる自分の想いに気付かされたその時だった。
隣に立ったアスランを仰ぎ見て、息が止まる。
アスランの瞳に自分が映っていた。
白いワンピースが、翠に染まっていた。
「おめでとう、カガリ。」
声が優しく降り注ぐ。
耳を澄ませていたくなる、だからアスランといると静かな気持ちになる。
ふわり、舞い上がる気持ちを今だけは胸に仕舞わずに、
言葉にしよう。
「ありがとう。」
2人だけの乾杯。
口に含んだシャンパンに
まるでハチミツを溶かしたような優しい甘さを感じたのは
気のせいだろうか。
「これは、キラとラクスから。」
そう言って、アスランはカガリにブーケを渡した。
清楚な淡いピンクのバラを基調とし、端々に添えられた鈴蘭が可愛らしく揺れている。
この花はキラとラクスが愛情を込めて育てたのであろう、
クライン邸の庭で寄り添う2人が見えるようで、カガリの顔に自然と微笑みが浮かんだ。
そんな風に、花の香に想いを馳せていたからであろう。
「それと、これは俺から。」
アスランの声にはっとして顔を上げれば、
「失礼。」
断りの言葉を落とされ、なんだか胸元がこそばゆくなる。
なんだろうと純白のワンピースに視線を這わせるとそこに、
「コサージュ・・・。」
ブーケと同じ、淡いピンクのバラに鈴蘭が散らされたコサージュがあった。
過去を見た、そう思って視界を濯ぐように瞬きをして、
もう一度見た先にあるのは偽りの無い、今。
――覚えてて、くれたんだ。
――あの頃が、今に変わっても。
――あの頃を、大切にしてくれた。
アスランがくれた、生花のコサージュがこの胸にある。
過去も今も変わらぬ想いを抱く、私の胸に。
真実に触れるようにそっと、カガリは繊細なバラの花びらに指を這わせた。
愛おしさが、バラの棘のように胸を刺して、
でも痛みの分だけ優しい気持ちになる。
――無限の加速度で広がっていくこの気持ちは、
アスランに届くかな。
想いを伝える手段はきっと、言葉だけじゃない。
だけど今、選べるものは言葉しか無いから。
真直ぐに決まった心、伝えるための息を吸い込んだ時、
ふと薫った花の香に背中を押された気がした。
「ありがとう。
嬉しい、とっても。」
アスランを仰ぎ見れば、驚いた瞳を緩めて
はにかんだような微笑を浮かべていた。
5月18日、午前0時まであと少し。
④へ続く・・・!
申し訳ございません!!
長くなってしまったので、一度切ります。
カガリの大胆発言は第4話までお待ちください!!
本当に申し訳ございません、ジャンピング土下座でお詫びいたします。
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