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soranokizunaのカケラたちや筆者のひとりごとを さらさらと ゆらゆらと
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カガリBirthday記念、アスカガSSの第2話です。
(次回完結予定)

語はこちらからをクリックしてお読みください。

アスランとカガリの幸せな誕生日を祈って。

こうして皆様とお会いできる契機となった
この日に感謝して。

xiaoxue

拍手[13回]

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戦前は、キラとラクスとアスランと、
小さなバースディパーティーを孤児院で開いた。
式典の、
キラと私の誕生日の前日に。

いつもアスランが贈ってくれたもの。
ラクスの育てた花で作った
生花のコサージュ。

花の香りは、まるでラクスのように優しくて、
アスランはどんな仕掛けをしたんだろう、
生花はいつまでも瑞々しく彩を輝かせて。

嬉しくて、
嬉しくて、
この胸に、あなたへの想いを抱いて
式典のドレスの胸元に
コサージュをさした。

あの頃。

 

 

 

サンダルのヒールを鳴らしながら、カガリはマリューの後ろに続いた。
ホームパーティーにしては静かすぎる廊下に、かすかに眉を顰める。

「なぁ、他には誰が来るんだ?。」

カガリの問いにマリューはたおやかな笑みを返すだけで、
益々訳がわからないとカガリは首をかしげた。
廊下の突き当たりのリビングの扉の前に行き着くと、
マリューは勢い良く扉を開けて、カガリの背中を押した。

 

 

Happy Birthday!!!!


その声と共に、クラッカーの弾ける音が華々しく重なる。
紙テープまみれになりながら、きょとんと瞳を丸くしたまま固まったままのカガリの目の前には
シャンパングラスを持った親しい仲間たちがいた。
ムゥやマリューをはじめとする戦友や軍の者たち、秘書官を含めた行政府の者たち、
コル爺やエリカといった技師を中心としたモルゲンレーテ組み、
そしてアンリやロイといった古い友人たち。

――パーティって・・・まさか、私のか?!!!

未だ突っ立ったままのカガリに、コル爺は無理矢理グラスを握らせると同時に
あまりに完結な乾杯の音頭を取った。

「飲むぞ~!!カンパ~イ!!!」

「「「「「カンパ~~~~~~~~イ!!!」」」」」

高らかに掲げたシャンパングラスの中で
星のような気泡が軽やかに弾けた。



 

エリカ特製ミートパイを頬張りながら、カガリはムゥとマリューに問うた。
カガリの頭上には、本日の主役ということで小さなティアラが飾られていた。

「もしかして、このパーティーって・・・。」

ムゥは(本日欠席)キサカ特製サバイバルカレーに舌鼓を打ちながら応えた。

「そ、カガリのバースディパーティーってこと。」

と、小さなお髭にパイくずをつけたコル爺が乱入してきた。
手にはアンリとロイの実家である旧ファウステン家自慢のアップルパイを持っている。

「まぁ、式典の前夜祭になっちまったけどな。」

庭と一体的なつくりになっている開放的なリビングには、
大きな皿に盛り付けられた料理が並んでいる。
カガリのためにおのおのが持ち寄った料理を振る舞い合う姿は
コル爺の言葉どおり式典の前夜祭のようになっている。
カガリは喜びを噛み締めるように瞳を閉じて、

「ありがとう。
とっても嬉しい。」

そう言うと、手に持っていたミートパイを一気に口に詰め込むと、
ミニスカートのワンピースの裾を翻し、フロアの方へ駆け出した。

 

 

“今日はありがとう。
どうだ、最近。相変わらずか。“
そう声をかけて回る。
すると仲間たちは一様に、カラリと晴れたオーブの空のような笑顔を見せて頷いてくれた。
酒も手伝ってか、みんな酷く上機嫌で、
酒や料理を堪能しながら紡がれる言葉は途絶えることを知らない。


仲間たちがくれる心地よい空気に心がほぐれて、
くれる笑みが心を躍らせて、


でも心はあまりに素直に“彼”を求めて、
視線は何にも縛られず、“彼”の姿を駆け出すように追って、


いけないと、心が鳴らす警鐘に瞳を閉じた時、
振り下ろされた真実に、立ち尽くした。


「今日、アスランは来れないって。」

「え。」

ムゥの声に無防備な声を発してしまい、
カガリは慌てふためく心を懸命に押さえ込んだ。
が、そんなことをしてもムゥには筒抜けなのだろう、
ムゥはカガリの肩に手を置くと、困ったように微笑んで言葉を落とした。

「残業だって、あいつらしいよなぁ。」

 


 


あの後、ムゥになんて言って応えたのか覚えていない。

乱入してきたアンリとロイと幼い頃の話をしたり、
エリカから溺愛する子どもの話を聴かされたり、
それに大いに共感するふりをしてムゥがマリューに迫ったり、
コル爺が馬鹿でっかい声で歌いだしては、何故かみんなで肩を組んで大合唱したり。


本当に楽しくて、


嬉しくて、


感謝の気持ちが水のように溢れて、


でも、


どんなに溢れても満たされない


私の心はどうしてこんなに、欲しがりなのだろう。

 

この胸に、コサージュが無いから?

 


 

 

「さ、今日はもうお開きにしよう!」

そんなムゥの一声で、やはり最後はコル爺の一本締めだった。
感謝と別れの挨拶をしながら耳を澄ませば、
どうやら参加者の多くは市街地で始まっている式典の前夜祭に繰り出すらしい。

――ほんっと、気持ちのいい奴らだよなぁ。

誰も居なくなったリビングにあるのは、
祭の後の寂しさ。
カガリは切り替えるように後片付けを手伝おうとした、が、

「あらあら、カガリさんは今日の主役だもの、
休んでいてね。」

「そうだぜ、今日は我が家に泊まっていくんだし。」

――・・・。

「えっ!!聴いてないぞっ!!」

「あら?マーナさんには許可をもらってるわよ。」

マリューは、“ねぇっ”と言いながらムゥに寄り添い、
ムゥは大げさに頷きながら応えた。

「まぁまぁ、
ちょっとだけ待ってやってくれよな。」

ムゥの言葉の指すものが分からず、カガリは首をかしげた。

――何を・・・?
   誰を・・・?

 



時計が間もなく夜の11時半を指そうとした時、
来客を伝えるベルの音が控えめに響いた。

誕生日まで、あと30分。

 

③へ続く・・・


次回、完結します!
カガリの大胆発言にご注目!



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カガリの誕生日を記念しまして、ささやかですがSSを書きました。
設定は以下のとおりです。

時間軸:戦後初めてのカガリの誕生日
関係性:代表と准将・・・ですが、ほんの~り甘いです。
結 末:もちろん幸せな結末です 

物語はこちらからをクリックしてお読みください。

カガリが幸せな誕生日を迎えられることを祈って。

Xiaoxue
 

拍手[35回]

 

 



今やオーブの国民で、
5月18日が何の日であるか知らない者は少ない。


旧世紀から代表首長生誕記念日は国民の休日である他、記念式典が伝統的に行われてきた。
一部が世界遺産に認定されているアスハ邸を広く国民に開放し、
当日は広大な邸内が、人種や国籍、年齢、職業、地位などの区別無く多くの人々で賑わいを見せる。
太古の首長が生誕祝いに贈られた貢物を市井へ振舞ったことが切欠となり、
現代ではオーブ国内の5つ星レストランから街の小さなカフェまで様々な店が料理をふるまい、
農場からは採れたての野菜や果物、食欲を掻き立てる肉、その隣では新鮮な海の幸が並び、
他方では絵画や彫刻、様々なオブジェが並び、反対側では色とりどりの花であふれ、
小さな広場では音楽が奏でられ、一つ二つと歌声が重なり、
大空の下で手を取り合いダンスを踊る。
その様子は観光ガイドブックに必ず掲載される程のフェスティバルと化していた。

だからこそ、カガリは式典の成功へ向けて力を尽くした。

 

式典、前日――

手入れが行き届いた庭に色鮮やかな花々が咲き乱れ、
普段は積み重なった歴史の重厚さを感じさせる建物はそこかしこに装飾が施され、
出店者たちはまるで市場さながらの活気に満ちて準備に勤しむ。
その中央で、式典の主役は
タンクトップにカーゴパンツ、手には軍手という井出達で、

「よーし、引っ張るぞぉっ!!」

バルコニーに看板を引き上げるために、ロープを引っ張っていた。

「姫様っ!!そのようなことは男衆にお任せくださいましっ!!」

こうやってマーナに咎められるのもいつものこと。

「いい・・・んだよっ、っと。
こうやって、みんなと一緒に創っていきたいんだ。」

カガリは手際よくロープを縛りに掛かる。

 

カガリは多くの人々に祝ってもらえること以上に、
自分の誕生日が多くの人々の喜びに繋がる切欠となることに喜びを感じていたのだ。
きっとこの式典の始まりは、首長が民への感謝を表したことにあるのではないかと、
カガリは思う。
何故なら、この式典の日を迎えるたびに思うのだ、
ありがとう、と。
故に、カガリは文字通り全身全霊で式典の準備に打ち込んでいた。

 

そう、それは真実で。

 

でも、瞳を閉じれば見えるのは
月のように浮かぶ過去。

キラとラクスと、アスランと、
みんなで祝った初めての誕生日も、
二度目の誕生日も、
思い出すだけで胸が締め付けられる程嬉しかったから、
喜びで溢れていたから。

アスランが、傍にいたから。

あの頃に帰りたいとは思わない。
選んだ今に、後悔は無い。
過去に想いを馳せることと、
過去へ縋ることは違う。
でも時々わからなくなる、不安になる、
私はそのどちらなのだろうかと。

眠りに落ちるように閉じてゆく瞼、
過去に誘われたのか、
それとも祈りを馳せようとしているのか、
分からない。

だからカガリはぐっと視線を定めると、次の作業に取り掛かった。

 

 

と、その時だった。
携帯用端末が鳴り、カーゴパンツの大きなポケットから取り出せば
良く知る名前が表示されていた。

「よっ、ムゥ!」

と、カガリが言い終わる前に、端末の向こう側のムゥの快活な声が飛んできた。

「カガリ、今夜時間作れないか?
我が家のホームパーティーにご招待するぜ。」

ちょっとおどけたムゥの声にカガリはくすくすと笑みを零した。
が、見渡せば、庭も屋敷内でも急ピッチで式典の準備が進められている。
ここで自分が抜ける訳にはいかない。

「ムゥ、悪いんだが・・・。」

と、断りの言葉を紡ごうとした時、掌に乗っていた携帯端末がマーナに奪われた。

「ムゥ様っ!!マーナでございます、おひさしゅう・・・。
えぇ、えぇ、・・、はい、はい、・・・あーら、左様でございましたか。」

そういいながら、マーナはチラリと横目でカガリを見た。
その視線に何かを感じ取り、カガリの身体がピクリと跳ねた。

「もちろん喜んで、では。」

ピ。
端末が切断された音が響いて、カガリは瞳を丸くした。

「マーナ、どういうことだっ。」

まだ準備が完了していないのに、パーティーに参加できる筈無いだろう、
カガリの顔にはそう書いてある。
しかし、だてにマーナも長年カガリの乳母を務めてきただけある、
不動の笑みを浮かべてピシャリと言い放った。

「姫様、準備は私どもにお任せになり、
どうぞ、楽しんできてくださいましっ!!」

 

 

それは例えて言うなら、強制連行であったと、
カガリは思う。

何処からともなく現れたSPにバスルームに連れて行かれ、
脱衣所の籠の中には真新しいワンピースが用意されていた。
タオルドライしながらバスルームを後にすれば、目を光らせた美容師がいて、
瞬く間に車に押し込まれて、車はフルスロットルで爆走。
そして、今。

ムゥの家の呼び鈴を鳴らしている。

――式典の準備は大丈夫であろうか・・・。

思わず漏れそうになった溜息を、首を左右に振って打ち消した。

――せっかくのパーティーだもんな、楽しまなくっちゃ!

小さな拳をきゅっと握って気合を入れた、その時だった。

木製のシンプルな装飾のなされた扉が開き、マリューが顔を出した。
洗濯褪せしていないエプロンからは新婚の甘い雰囲気が漂っていた。

「ごめんなさいね、急に呼び出しちゃって。
どうぞ。」

「いや、こんなお誘いは大歓迎だ!
ありがとう。」

カガリはマリューの後を続いてリビングへと向かった。




大人の悪戯はもう既に始まっているとは
知らないまま。




<②へ続く>



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【アスカガSS】覚悟の響き おまけ① キラ視点

こんにちは。

筆者の拙い文章でございますが、
お読みくださった方、拍手を下さった心優しい方、
本当にありがとうございます。
心から嬉しく思っております。

さて、今回はおまけ①のキラ視点、
続いて、おまけ②のアスラン視点をUPいたします。

キラ視点はちょこっとコメディータッチでお送りいたします。
物語は、以下の物語はこちらからをクリックして、お読みください。

お1人でもお楽しみいただける方がいらっしゃることを祈って・・・。

xiaoxue

拍手[13回]







おまけ①【キラ視点】 ~だから私も・・・~






やっぱり、双子のシンクロってあるのかなって思う。
なんとなく、カガリが元気無い時とか、体調悪い時とか、
分かっちゃうんだ。
たとえ、オーブから遠く離れたプラントに居ても。

「カガリ、何かあったでしょ。」

モニター越しにカガリにそう問えば、
素直に頬を染めちゃったりして・・・。

――あー、アスランと何かあったんだ・・・。

僕は直ぐにそう思った。
妹の幸せを心から祈る兄としては、喜ばしいことであるはずなのに、
どうしてだろう、何処か釈然としない。

う~とか、まるで子猫が唸るような声をあげて、ぱちぱちと瞬きする仕草は、
とてもオーブの代表首長とは思えない。
はっきり言って、恋する女の子。
素直に可愛いなぁと思いながら、まだアスランを想い続けていることに安堵し、
そしてやっぱり、釈然としないのだ。

「で、何があったの。
アスランには絶対に言わないからさ。」

うん、言わないよ。
ラクスには言うけど。
そう思った時、ちょうどラクスが髪をタオルドライしながら現れた。

「カガリ、どうなさったのですか。」

「うん・・・、」

ラクスが問えばカガリは素直に話し出す、
僕はちょっと切ない気持ちを飲み込んで耳を傾けた。
今日の切ないポイント1。

「ちょっとな、私の発言が切欠で、軍が割れちゃって・・・。」

え?それって大丈夫?
僕は瞳を丸くしたが、
カガリが髪を耳にかける仕草が妙に女っぽくて
事の重大さとはかけ離れたように見えた。

「それは、さぞ大変だったことでしょう。」

ラクスの、心に寄り添うような声に、
カガリは肩にもたれるような声で応えた。
僕は、ラクスとカガリの友情にほのぼのとした気持ちを覚えながらも、
やはり切ない気持ちを抱いた。
これで、切ないポイント2。

「うん。反省してる。
あっ、でも、大丈夫だったんだ。」

「誰かが、おさめてくださったのですか。」

ラクスの心を引き出すような声に、僕は目を瞠る。
やっぱりラクスはこういう所、すごいと思う。

画面の向こうでは、カガリがほてった頬を誤魔化すように手の甲で擦っている。
あぁ、もしかして・・・
もしかしなくても・・・

「うん・・・、
アスランが・・・。」

やっぱり・・・。
切ないポイント3。
僕はこぼれそうになる溜息をカルアミルクで飲み込んで、
その横でラクスは両手を合わせて無邪気に喜んでいる。
でも、続く言葉に僕は、カルアミルクを危うく噴出しそうになった。

「あのな・・・、
アスランが・・・その・・・、格好良かったんだ・・・。」

え・・・?
今、なんつった・・・?
誰が格好良いって?
え?
誰?誰?
まさかあの、へたれハツカネズミの事じゃないよね。

「それは、どういうことでしょうか。」

きょとんと瞳をまるくした愛らしい恋人がいて、
僕はなんとなく、これ以上聴きたくないような気持ちだった。
だって、なんとなく・・・、
格好良いアスランって・・・・・・癪にさわるじゃんっ!

「えと・・・。」

言葉に詰まって潤んだ瞳を泳がせながら、きゅっと掌を握って・・・
あぁもう、恋するカガリって可愛いんだよな・・・。
その仕草に、切ないポイント4。

「私がな、暁に乗って戦う時はな・・・。」

あー、カガリそんな事言ったんだ。
そりゃ、軍のみなさん心配して暴動が起こるだろうに。
ほんっと、自分のことになると鈍感になるんだよね、カガリって。

「アスランが・・・言ったんだ。
みんなの前で。
“ 生きて、護り抜く ”って。」

そう言ったカガリの笑顔は、陽の光のように眩くて、
やっぱりアスランの事は癪にさわるけど、素直に僕は嬉しく思った。
2人は恋人から、カガリとアスランだけにしか出来ないような関係へ変わって、
それでも2人は想い合っているのだと、
僕は素直に安堵したんだ。
もうすぐ、2人はもう一度、手を取り合うことができるんじゃないかって。

でも、あれ~。
おかしいなぁ~、
こういう所だけ、僕とカガリはシンクロしないんだよね。

「でな・・・。」

そう言って、カガリは握った拳を一心に見詰めるようにしてぐっと力を込めて、
凛々しく顔を上げた。

「その・・・、羨ましかったんだっ!」

・・・え?
カガリ、今なんつった?
え?
ときめいちゃったり、したんじゃないの?
惚れ直しちゃってり、したんじゃないの?

「アスランが、羨ましかったのですか?」

おっとりとラクスが問うと、
カガリは小さな拳をぶんぶん振って強く頷いた。

「うんっ。
だからな、
私も格好良くなりたいぞっ!」

そう結論付けて、自分に自分で納得したように大きく頷いたカガリは、
スコールの後に広がるオーブの蒼い空のように晴れ渡った顔をしていた。

そして、
僕の釈然としない気持ちも、切ないポイントも全部チャラになった。

カガリのこういう、ちょっと鈍くて、
ちょっと思考がずれちゃうところが、
僕のツボだったりするのである。

 

さてと、カガリとおしゃべりを楽しんだら
“格好良かった彼”とも久しぶりに話そうかな。
僕のこの鬱憤を全~部ぶつけなくちゃ、釈然としないや。
え?全部チャラになったんじゃなかったかって?

もちろん、カガリに対してはね♪

 


「っ・・・・!」
調度その時、アスランは不意に走った寒気に両腕をさすった。





* * * * *
【あとがき】

今回はキラ視点で、ちょっと遊びの入った内容でした。

カガリの結論は「アスランのように格好良くなりたいぞ!」となりましたが、
こんな風にちょこっと思考がズレてしまうカガリで、
キラ兄様は救われるのでした。

キラの切ないポイントは類型加算されて、
“格好良かった彼”に謂れの無い天罰が下ることでしょう(笑。
しいて言うなら、「僕を切なくさせた罪」でしょうか?
さぞ、重~い罪なのでしょう(笑。

さて、続いておまけ②としてアスラン視点をUPいたしますので、
よろしければ併せてお楽しみください。

 



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こんにちは。


カガリ視点、いかがだったでしょうか。

アスランにときめくカガリが見たくて、カガリ視点を書きました。

本編後、カガリとアスランが代表と准将として、
オーブのために尽力する日々を過ごしていても、
きっとこんな風に、予期せぬタイミングで
どうしても相手に惹かれてしまうことが、あると思います。
そんな時、アスランとカガリは
その想いを表情に出すことも、相手に伝えることも、
きっと選ばないと思います。

今回のお話では、カガリはアスランへの想いを
懸命に、胸に仕舞います。
想いの深さだけ胸を刺す痛みは、どれ程のものでしょうか。
しかし、アスランを大切にしたいから
カガリは想いを胸に仕舞うことを選びました。

相手を大切する方法は人それぞれに沢山あって、
アスランとカガリの場合は、とても難しく、
絶えず痛みを伴う方法だと思います。
それでも大切にし続ける2人に、筆者は強さを感じます。

 

さて、次回はブログにて、今回のSSのおまけをUPします。
最強の彼等の登場です。

拍手[7回]


【アスカガSS】『覚悟の響き』のカガリ視点です。
今回で完結します!

アスランの言葉に、カガリは何を想ったのでしょうか。

本文は、以下の物語はこちからをクリックしてください。

お1人でもお楽しみいただける方がいらっしゃれば、幸いです。

拍手[17回]






覚悟の響き~心震わす響き~

 

 


はぁっ、はぁっ・・・

カガリは全速力で廊下を駆けながら、苦味を帯びた表情を歪めた。
脳裏に甦るのは、モエギの泣きそうな表情と、

『皆様から、口止めされておりましたので・・・カガリ様にはお伝えするなと・・・。』

ぽつりぽつりと零れた真実と、

『今、皆様は会議にご出席です・・・。
カガリ様が、暁でご出陣されることを、許すか否かをめぐって・・・。』

楽観的過ぎた自分の浅はかさと、

『あっ、皆様のことを責めないで下さいっ!!
カガリ様のことを大切に想うがこそ・・・っ!!』

そして、馬鹿が付く程篤すぎる、
部下たちの忠誠心だった。

――バカヤロウっ!!!

目的の会議室が目の前に迫り、
カガリは会議室の扉を蹴破った。

 


カガリは瞳を閉じて大きく息を吸い込んで、荒れる呼吸を強制的に沈めた。
開いた瞳の先に捉えた存在に、大きく心臓が跳ねる。

――ア・・・スラン・・・っ。

そしてアスランの視線の先を辿れば、そこには厳格に口元を引き結んだ幕僚長が立っていた。
鳥肌が立つような物々しい空気にカガリは唇を噛み、硬く拳を握り締めた。

『いざと言うときは、私も暁で出るからな。』

あの発言を何の覚悟も無く言った訳ではなかった。
オーブの為にもてる力の全てを注ぎたい、
その為に、今私に出来ることはオーブの代表首長として職務を全うすることであることは、
わかってる。
でも、もし、こんな私の力でも、出来ることがあるなら、
それが暁で戦場を駆けることであっても、
私はあらゆる手段を排除しない。
夢を叶える為に。
この夢は、私だけの夢じゃないから。

――ここにいる、みんなの、
   いや、もっと沢山。
オーブのみんなの夢だから・・・っ!


こんな風に、誰かの感情の波を立てたくて言った言葉ではなかった、
築き上げた信頼にひびを入れたかった訳じゃない、
それでも、自分の発言が招いた今という結果に、カガリは小さく首を振った。
滲みそうになる瞳を戒めるように細め、
何より先に状況確認をするために、中央に鎮座するキサカの元へ駆けた。
が、キサカは、そんなカガリの思考を先回りしたように、カガリの言葉を制した。
キサカによって静かにかざされた手からカガリは読み取る、
“ 結末を、見守れ ” 、と。
キサカの馳せる視線に倣うように顔を上げれば、
依然として対峙する幕僚長とアスランがそこにいた。

彼等だけが纏う、音の無い世界に響くのは
けたたましいまでの自分の鼓動。

幕僚長は日本刀のように冷涼な眼光を鋭く光らせ、
アスランは灼熱を帯びた眼差しを静かに向ける。

強く迷わず
互いに剣を構え、
貫くのは、信念――

それは、オーブの戦い方であると、
遠く響くようにカガリは感じた。
無意識に、左手を右手で包み込み
鼓膜を叩くような鼓動を抑えるように胸にあてた。

 

言葉も、呼吸さえも遮断する
沈黙が空間を支配する。

 

「条件がある。」

幕僚長の地を這うような声が、沈黙を切り裂いて、
カガリは息を詰めて幕僚長を見遣った。

「アスハ代表が、暁でご出陣される場合は、
死ぬ気で護れ。」

幕僚長が折れたことを示すこの発言に、
会議室の一方で歓声が上がり、他方で譲歩がもたらす特有の溜息が聞こえた。
しかし、カガリは驚愕に瞳を見開いた。

――違う・・・、人は、生きるために護るんだ・・・っ!!

まるで会議の幕が一気に下ろされたように、開放的な空気が流れこむ会議室を
カガリは慌てて見渡した。

――待てっ、みんな、違うっ!!

焦燥に埋め尽くされるように言葉は声にならず、
ただ、乾いた息遣いだけが唇に乗る。
違うと首を振った、その時だった。
アスランの声に、カガリは顔を上げた。

 

「その条件をのむことは、出来ません。」

幕僚長は眉間に険しい皺を刻み、
会議室からは驚愕と不快感を示すどよめきが湧き上がった。

――アスラン・・・。

アスランは、その空気に靡くことも染まることも無く、
静かに強く、射抜くように言葉を紡いだ。

「生きて、護りぬきます。」

 

揺ぎ無いアスランの覚悟が、響く。
カガリの心を、震わせる。
まるで優しく包み込むように。

灼熱を帯びる眼差しに、心強さを覚える。

何故だろう、どうすることも出来なかった。

無限の加速度で高鳴る鼓動も、
焦がれるように熱くなる胸も、
薫るような過去も、
泣きたいような衝動も、
胸に仕舞い続けた、アスランへの想いも。

 

“全く、ザラ准将は可愛げが無いっ。”
“御手柔らかに、お願いします。”
幕僚長とアスランの会話を遠くで聴きながら、
カガリはぎこちない仕草で、
手の甲で頬を擦った。

――きっと今、
顔、あかい・・・

――アスランの、せいだ・・・

――バカ・・・ヤロウ・・・

アスランの言葉が残光のように胸に残って、
頬を擦っても、擦っても、
熱が消えない。
消せない。

でも。

消せない想いがあるのなら
胸に仕舞わなくちゃ。

アスランに、見つからないように。
誰にも、気付かれないように。

早く。
傷つかないように、そっと。

カガリは息を詰めて、ぐっと下唇を噛んだ。
飲み込む想いの深さだけ胸を刺す痛みに、
歪みそうになる表情を隠すように俯いた。

 

 

何処からとも無く沸き起こった割れんばかりの拍手。
それは、平和の福音。
その音の源を一つ一つ確認するように、カガリは出席者ひとりひとりに面差しを向け、
そして深々と頭を下げた。
その様子に慌てた武官や文官らが、がたがたと派手な音を立てて立ち上がった。
代表、お顔を上げてください、と口々に言いながら。

「みんな、すまなかった。
私の言葉が足りなかったせいで。」

顔を上げたカガリの琥珀色の瞳には、アスランと同じ覚悟の威光が宿り、
凛と響く言葉は、恵の雨が大地を潤すように、彼等に染み渡っていく。

「そして、ありがとう。
私も、生きてこのオーブを護り抜く。
だからこれからも、力を貸してほしい。
共に、平和を
実現していこう。」

そして、スコールの後に広がる青空のように晴れやかな空気が
会議室を満たした。
 



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