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soranokizunaのカケラたちや筆者のひとりごとを さらさらと ゆらゆらと
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「Happy birthday!」

マスターがカガリのコースターに置いたのはデザートカクテル。
色とりどりのフルーツにジュレがキラキラと輝いて、まるで宝石のようだ。

「ぅっわぁ。」

カガリにぱぁっと笑顔の花が咲く。

「お誕生日おめでとう、カガリ。」

穏やかな笑顔のアスランに、
“ありがとう”と、カガリはほんのりと頬を染めた。



雫の音 - shizuku no ne - 7




拍手[12回]









スイーツは世界平和だと、カガリは本気で思う。
だって、さっきまでの痛みも滲んだ涙も全部空へ飛ばしてしまうから。

「んまぁ〜いっ!」

一つひとつのフルーツが口の中で弾けて、思わずカガリは瞳を閉じた。
すると、フルーツのきらめきが瞼にさえも映るようで。

「マスターは魔法使いみたいだな!」

「最大の賛辞をありがとうございます、姫。」

「もう、からかうなよっ。」

口を尖らせたカガリに、バルドフェルドは人差し指を“ノンノン”と振った。

「私は真面目に言ってるのだよ。
だって、アスラン君が連れて来たってことは“ソウイウコト”、だろ?」

ウインクを飛ばしたバルドフェルドに、アスランはため息を漏らした。

「カガリを困らせないでください。
“ソウイウ”関係では無いんですから…。」

カガリは話の流れから、バルドフェルドはカガリの事をアスランの恋人か何かと勘違いしているのだと悟り、
慌てて両手を振り全力で否定した。

「そうだぞ!
私とアスランはただの同級生で、友達で!!
恋人とか、そういう関係だって勘違いされたら、アスランに迷惑かけちゃうだろ!!」

“なっ。”と、カガリが同意を求めるようにアスランに視線を向けても、
アスランは“えっ、いや。”と歯切れの悪い返事をし、
焦ったカガリが口走ったのは、自分の制御を超えた内容だった。

「だいたい、アスランには恋人や好きな人がいるかもしれないしっ。」

カガリの胸の内は一気に冷え切って、なのに焦りが体を熱くして、
そのアンバランスさの中で聞きたくもないアスランの答えを待たなければならず、
思わず顔を覆いたくなった。

ーーうわぁ、もう、サイアクだっ。

「恋人はいないよ。」

先程の曖昧な返事とは違い、アスランははっきりと答えた。

「…え。」

それ程誤解されたくなかったんだと、素直にツキンと痛んだ胸にカガリは苦笑する。

ーーそりゃ、昔振った女を恋人と勘違いされたら嫌だよな。

と、普通に考えれば当たり前の事なのに。

ーーそれに…。

カガリはデザートカクテルをクルリと一混ぜして口に運んだ。
アスランは恋人“は”いないと言った。
だからもしかしたら、好きな人はいるのかもしれない。

「好きな人は、いるけど。」

ーーほら、やっぱり。

本当に、このデザートカクテルがあって良かったとカガリは思う。
自分の蒔いた種で勝手に傷つくなんてめちゃくちゃでボロボロだから、
せめてこの魔法のようなお酒に身を委ねてしまいたい。

「アスランなら、大丈夫だよ。」

それはカガリの素直な言葉だった。
減ってしまったデザートカクテルに視線を置いたままカガリは続ける。

「きっと想いは届くから。」

“どう…かな。”とアスランは視線を下げた。
アスランの表情は、何故だろう後悔の色が深く見えて、カガリの胸は共鳴するように軋む。

「その人とは、ずっと離れていて…。
でも、ずっと忘れられなくて。」

カガリの脳裏に、会議室でのアスランの表情がフラッシュバックする。
高校3年生の文化祭の写真をシンとルナと一緒に見ていた時、
アスランはどこか寂しそうな顔をしていた。

ーーアスランは今でもラクスの事を…。

あれはカガリが大学2年生になる前、
ラクスが声楽の勉強のためにパリへ渡ったとキラを通して聞いた。
キラはアスランと一緒に空港へ見送りに行ったのだ。
ラクスは音楽家になるまではオーブに戻らないと決意していたという。
ラクスに対し澄んだ泉のように清らかな印象をもっていたカガリは、
彼女の決意にしなやかな強さを感じて、勝手に励まされていた。
世界の歌姫と称されるラクスは今でもヨーロッパを拠点に活躍しており、
オーブに帰国したとの知らせは無い。

アスランは、彼女の意思を何よりも大切にしたことだろう、
自分の想いは胸に仕舞って離れることを選んで。
ラクスと一緒に居られない痛みは、想いの分だけ強く、深くーー
そんな痛みをアスランはずっと抱き続けているんだ。

「それでも、アスランなら大丈夫だ。」

アスランに前を向いてほしくて、カガリはカウンターの上のアスランの手を取った。

「きっと、一緒に居られる時が来たら、
絶対、アスランのことを好きになってくれる。
諦めちゃダメだっ!」

高校3年生の文化祭の時、アスランがラクスに向けていた眼差しを忘れない。
彼女を守るんだって、アスランの意思をこの目で見たからーー

「カガリ…。」

カガリは滲みそうになる瞳を誤魔化すように、
“つい、熱くなっちゃったな。”と言って、パタパタと両手で顔をあおいで、

「アスランの恋は叶ってほしいんだ。
私のは、無理だから。」

ポツリとこぼしたカガリの本音、切なさは隠せなかった。

「無理って…?」

「私にも、忘れられない人がいるんだ。」

ーー私はずっと、アスランのことが好きで、

「でも、その人には心に決めた人がいて…。」

ーーアスランはラクスを想っていて、

「最初から、叶わない恋だったんだ。」

ーー高校生だったあの頃も、
大人になった今も。

「だから、アスランには諦めないでほしいんだ。
きっと叶うって、祈っているから。」

涙の予感がする。
視界は心を映した様に揺らめく。

止まらない想いは、永遠に繰り返させる失恋に変わる。
分かっていても、止まらない。

雫の音が聴こえた時、
カガリは意識を手放した。




ーーーーーーーー

アスランにも忘れられない人がいたんですね。
その痛みを十二分に知るカガリさんは、
アスランの話を聞いて共鳴するように胸を痛めます。
と同時に、アスランを好きでいる限り、失恋は永遠に続いていくことを思い知る・・・。
なんて、ちょっとつらすぎます(>_<)

ですが、アスランの言葉をよくよく思い返してみると…?

次回はアスラン視点のお話です。
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スイーツは世界平和だと、カガリは本気で思う。
だって、さっきまでの痛みも滲んだ涙も全部空へ飛ばしてしまうから。

「んまぁ〜いっ!」

一つひとつのフルーツが口の中で弾けて、思わずカガリは瞳を閉じた。
すると、フルーツのきらめきが瞼にさえも映るようで。

「マスターは魔法使いみたいだな!」

「最大の賛辞をありがとうございます、姫。」

「もう、からかうなよっ。」

口を尖らせたカガリに、バルドフェルドは人差し指を“ノンノン”と振った。

「私は真面目に言ってるのだよ。
だって、アスラン君が連れて来たってことは“ソウイウコト”、だろ?」

ウインクを飛ばしたバルドフェルドに、アスランはため息を漏らした。

「カガリを困らせないでください。
“ソウイウ”関係では無いんですから…。」

カガリは話の流れから、バルドフェルドはカガリの事をアスランの恋人か何かと勘違いしているのだと悟り、
慌てて両手を振り全力で否定した。

「そうだぞ!
私とアスランはただの同級生で、友達で!!
恋人とか、そういう関係だって勘違いされたら、アスランに迷惑かけちゃうだろ!!」

“なっ。”と、カガリが同意を求めるようにアスランに視線を向けても、
アスランは“えっ、いや。”と歯切れの悪い返事をし、
焦ったカガリが口走ったのは、自分の制御を超えた内容だった。

「だいたい、アスランには恋人や好きな人がいるかもしれないしっ。」

カガリの胸の内は一気に冷え切って、なのに焦りが体を熱くして、
そのアンバランスさの中で聞きたくもないアスランの答えを待たなければならず、
思わず顔を覆いたくなった。

ーーうわぁ、もう、サイアクだっ。

「恋人はいないよ。」

先程の曖昧な返事とは違い、アスランははっきりと答えた。

「…え。」

それ程誤解されたくなかったんだと、素直にツキンと痛んだ胸にカガリは苦笑する。

ーーそりゃ、昔振った女を恋人と勘違いされたら嫌だよな。

と、普通に考えれば当たり前の事なのに。

ーーそれに…。

カガリはデザートカクテルをクルリと一混ぜして口に運んだ。
アスランは恋人“は”いないと言った。
だからもしかしたら、好きな人はいるのかもしれない。

「好きな人は、いるけど。」

ーーほら、やっぱり。

本当に、このデザートカクテルがあって良かったとカガリは思う。
自分の蒔いた種で勝手に傷つくなんてめちゃくちゃでボロボロだから、
せめてこの魔法のようなお酒に身を委ねてしまいたい。

「アスランなら、大丈夫だよ。」

それはカガリの素直な言葉だった。
減ってしまったデザートカクテルに視線を置いたままカガリは続ける。

「きっと想いは届くから。」

“どう…かな。”とアスランは視線を下げた。
アスランの表情は、何故だろう後悔の色が深く見えて、カガリの胸は共鳴するように軋む。

「その人とは、ずっと離れていて…。
でも、ずっと忘れられなくて。」

カガリの脳裏に、会議室でのアスランの表情がフラッシュバックする。
高校3年生の文化祭の写真をシンとルナと一緒に見ていた時、
アスランはどこか寂しそうな顔をしていた。

ーーアスランは今でもラクスの事を…。

あれはカガリが大学2年生になる前、
ラクスが声楽の勉強のためにパリへ渡ったとキラを通して聞いた。
キラはアスランと一緒に空港へ見送りに行ったのだ。
ラクスは音楽家になるまではオーブに戻らないと決意していたという。
ラクスに対し澄んだ泉のように清らかな印象をもっていたカガリは、
彼女の決意にしなやかな強さを感じて、勝手に励まされていた。
世界の歌姫と称されるラクスは今でもヨーロッパを拠点に活躍しており、
オーブに帰国したとの知らせは無い。

アスランは、彼女の意思を何よりも大切にしたことだろう、
自分の想いは胸に仕舞って離れることを選んで。
ラクスと一緒に居られない痛みは、想いの分だけ強く、深くーー
そんな痛みをアスランはずっと抱き続けているんだ。

「それでも、アスランなら大丈夫だ。」

アスランに前を向いてほしくて、カガリはカウンターの上のアスランの手を取った。

「きっと、一緒に居られる時が来たら、
絶対、アスランのことを好きになってくれる。
諦めちゃダメだっ!」

高校3年生の文化祭の時、アスランがラクスに向けていた眼差しを忘れない。
彼女を守るんだって、アスランの意思をこの目で見たからーー

「カガリ…。」

カガリは滲みそうになる瞳を誤魔化すように、
“つい、熱くなっちゃったな。”と言って、パタパタと両手で顔をあおいで、

「アスランの恋は叶ってほしいんだ。
私のは、無理だから。」

ポツリとこぼしたカガリの本音、切なさは隠せなかった。

「無理って…?」

「私にも、忘れられない人がいるんだ。」

ーー私はずっと、アスランのことが好きで、

「でも、その人には心に決めた人がいて…。」

ーーアスランはラクスを想っていて、

「最初から、叶わない恋だったんだ。」

ーー高校生だったあの頃も、
大人になった今も。

「だから、アスランには諦めないでほしいんだ。
きっと叶うって、祈っているから。」

涙の予感がする。
視界は心を映した様に揺らめく。

止まらない想いは、永遠に繰り返させる失恋に変わる。
分かっていても、止まらない。

雫の音が聴こえた時、
カガリは意識を手放した。




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アスランにも忘れられない人がいたんですね。
その痛みを十二分に知るカガリさんは、
アスランの話を聞いて共鳴するように胸を痛めます。
と同時に、アスランを好きでいる限り、失恋は永遠に続いていくことを思い知る・・・。
なんて、ちょっとつらすぎます(>_<)

ですが、アスランの言葉をよくよく思い返してみると…?

次回はアスラン視点のお話です。
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