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電車の窓から見上げた空に既視感を覚える。
ーーやっぱり、オーブの空だな。
幼い頃の懐かしさに浮かんだ笑みは、あの日の痛みに少しだけ歪む。
あの日もこんな、秋を知らせる抜ける様な青空だった。
雫の音 ー shizuku no ne ー 2
ーーやっぱり、オーブの空だな。
幼い頃の懐かしさに浮かんだ笑みは、あの日の痛みに少しだけ歪む。
あの日もこんな、秋を知らせる抜ける様な青空だった。
雫の音 ー shizuku no ne ー 2
チェックのプリーツスカートにブルーのリボン。
彼と並んで歩いた通学路。
彼との関係は、高校の生徒会の元会長と元副会長。
彼の親友の双子の姉。
友達...よりも深い仲だったと思う、少なくとも私はそう思っていた。
しいて言えば特別な存在。
優秀なのに向こう見ずな所とか、手先以外はてんで不器用な所とか、何でも自分を後回しにしちゃう所とか、
見ていて放っておけなくて。
何より、一緒にいると楽しくて、
彼の笑顔が大好きで。
一人で抱える痛みを分けて欲しくて。
この気持ちが恋なのだと気付いたのは高校3年生になってから。
友人達からは、
“ぜぇぇぇったい両思いだから告白しちゃえ!”
と何度もけしかけられていたし、
かわいいと評判の後輩達からは、
“お付き合いしていないなら、いつも一緒にいないでください!”
と怒られ、
クラスメイトの男子からは
“え?お前らまだ付き合ってないの?”
と呆れられていた。
周りに何と言われても、
自分の想いに気付いても、
今はまだこのままでいたいとカガリは思っていた。
だから気付かなかったのだ、
想いの雫たちがいつしかいっぱいになって、今にもこぼれ落ちそうになっていることに。
あれは何の話の流れからそうなったのか分からない。
その日は、いつも一緒に帰る弟のキラがいなくて、彼と2人きりの帰り道。
抜ける様な青空に、ほんのりと秋が薫る風。
『本当に付き合っちゃおうか、私達。』
あまりにも自然に出た自分の言葉にカガリ自身が驚いた。
隣の彼も驚いた瞳でこちらを見ている。
精一杯の勇気で、カガリは願いにも似た言葉を続けた。
『私、アスランともっと一緒にいたいんだ。』
彼が微笑んだ。
紛れもなく、カガリが大好きな笑顔だった、穏やかな。
『ありがとう、カガリ。
でもーー』
コップの水が溢れたのは、最後の一滴の雫のせいではない。
これまで降り注いだ幾つもの雫が、そこにあったから。
そしてその雫は、誰にも止められないから。
もう、受け止められないと分かっていても。
『ごめん。
俺はラクスの側にいたいから。』
それが、カガリが真正面から見た最後のアスランの笑顔になった。
あれから、アスランとどんな会話をしたのか覚えていない。
何とか辿り着いた自分の部屋、糸が切れた様にベッドに沈んだ。
初めての失恋にどうしていいのか分からず、
止まらない想いが容赦なく胸を刺して、
痛くて痛くて涙が止まらなくて。
夕食の時間になっても部屋を出てこないカガリを心配したのだろう、
呑気な声で“今夜はハンバーグだってぇ♪”と部屋に入ってきたキラが、
驚きに固まった顔を良く覚えてる。
キラは何も聞かずに優しく頭を撫でてくれた。
そのまま泣いて夜を明かして、当然目元は真っ赤に腫れて、
翌日は学校を休まざるを得なくて。
このままじゃダメだと、バレー部で鍛えた根性で喝を入れても
涙が次々に溢れてきてベッドを抜け出せず、
“どうしよう、どうしよう”そんな言葉ばかりが頭をぐるぐると回って。
泣き虫なのはキラの方で、滅多な事では泣かなかったカガリは、
いざ泣いてしまった時の対処法が分からなかった。
だから、幼い子供のように涙が出ては目を擦っていた。
控え目なノックの後に顔を出したキラ。
“フレイとミリィがお見舞いに来てくれたよ。”と、言っていたけれど、
キラの事だ、私のために連れてきてくれたんだと直ぐに分かった。
『もう、ひっどい顔ね!』
『プリン買ってきたの、一緒に食べましょ。』
フレイとミリィに泣きついて、全部話して。
心の整理何て出来ないけれど
今の自分の立ち位置と、今自分がすべき事ははっきりとした。
だから次の日には学校に戻る事が出来た。
目元の赤味は引かなかったから、フレイに教えてもらったメイクで完璧に隠した。
友人やクラスメイトの心配の声に笑顔で応える。
“うん、大丈夫。今まで通り、ちゃんと普通に出来てる。”そう自分を鼓舞するように頷いた時、
理系特進クラスのキラとアスランが見えた。
心配そうなアスランの顔、その横のキラの方が泣きそうな程心配そう顔をしていて、
カガリは悟った、キラは全部わかってくれていたんだと。
その優しさがカガリを強くしたのを、きっとキラは今も知らないんだろう。
『おはよう、アスラン。
心配かけちゃってごめんな。
でも、もう大丈夫だから!』
そう、もう全部大丈夫なんだ。
今まで通り、
何も変わらない、
何も変えない。
『良かった。』
ほっとしたようなアスランの声。
きっと、大好きな笑顔を浮かべているんだろう、
だけどカガリはそれを直視することはできなくて、そっと視線をキラにずらした。
するとキラが全てを受け止めるように頷いてくれて、
思わずカガリはキラに抱きついたのだ。
1日目は乗り切る事が出来たけど、だからと言って“今まで通りの毎日”が戻る訳じゃなかった。
アスランへの想いの雫が止まることは無くて、
心の整理はいつまでも付かなくて、
赤くなった目元を隠すためのナチュラルメイクの腕は
フレイに褒められる程に上達した。
当然、アスランと一緒にいる時間は減っていった。
キラがさりげなくそうしてくれていたようだ。
受験が都合の良い言い分けになったのは助かった。
アスランと普通に顔を合わせること、
それと同じくらい辛かったのは、
『カガリ、俺と付き合ってくれないか。
ずっと好きだったんだ、お前のこと。』
卒業までのカウントダウンが始まると、カガリは告白される機会が増えた。
真っ直ぐに向けられた瞳がいつもカガリの胸を締め付けた。
カガリには痛い程分かるから、
どうしても溢れてしまう想いも、踏み出す勇気も、
報われない想いも、願いも、未来も、
それに向き合う痛みもーー
『ありがとう。
でも、ごめんな。』
カガリはそう言うのが精一杯だった。
偶然にも、アスランに言われたのと同じ言葉。
あの日の痛みがフラッシュバックするだけじゃない、
アスランへの罪悪感に、ぐっと喉元が詰まる。
あの時、私からあんな事を言われて、きっとアスランはこんな気持ちになったんだーー
カガリの一言で、毎回相手はあっさりと引き下がった。
いや、引き下がらざるを得なかったのだ。
何故なら、泣き出しそうな程悲しげな顔をしていたのはカガリの方だったから。
告白タイムが終わったら、こっそり隠れていたキラがいつもカガリを抱きしめてくれた。
“良く頑張ったね。”と、頭を撫でられれば、涙を我慢する事なんて無理だった。
あの時、キラとフレイとミリィがいなければ、
きっとアスランとの高校生活を乗り切る事なんて出来なかっただろう。
みんなに感謝しつつも、カガリは“このままじゃダメだ!”と自分を叱咤し、
前へ進もうとがむしゃらに頑張った。
カガリは当初、キラとアスランと同じオーブ最高峰の国立大を志望していたが、
志望校を変えフレイとミリィと同じ私立大に進学した。
元々国際政治に興味があったカガリは、大学1年生の後期にはスカンジナビアへ留学した。
アスランへの想いを断ち切るためではなく、とにかく前へ進むためだった。
当初留学は1年間の予定であったが、スカンジナビアでの生活と学びにどんどん惹かれ、
そのまま留学先の大学へ編入し、父親であるウズミの系列会社のスカンジナビア支社に就職したのだ。
前へ、前へ。
そう思ってきたけれど、
想いの雫は止まらずに、
今もこの胸に溢れ続けている。
ふとした瞬間に聞こえる雫の音が
胸を締め付ける。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
リハビリがてら作成したパロディですが、
数名の読者さまにはお気に召していただけたようで
ほっとしています。
さて、カガリさんが後ろ向きな理由…
原因はアスランっていう…(-ω-;)
カガリさんは真っ直ぐにアスランの事が好きで好きで忘れられなくて、
今でも胸を痛めています(T^T)。
今回は高校生の頃のエピソードだったのですが、
次回は現代に戻ります。
パロディらしくドタバタな展開を予定していますので、
楽しんでいただければ幸いです。
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チェックのプリーツスカートにブルーのリボン。
彼と並んで歩いた通学路。
彼との関係は、高校の生徒会の元会長と元副会長。
彼の親友の双子の姉。
友達...よりも深い仲だったと思う、少なくとも私はそう思っていた。
しいて言えば特別な存在。
優秀なのに向こう見ずな所とか、手先以外はてんで不器用な所とか、何でも自分を後回しにしちゃう所とか、
見ていて放っておけなくて。
何より、一緒にいると楽しくて、
彼の笑顔が大好きで。
一人で抱える痛みを分けて欲しくて。
この気持ちが恋なのだと気付いたのは高校3年生になってから。
友人達からは、
“ぜぇぇぇったい両思いだから告白しちゃえ!”
と何度もけしかけられていたし、
かわいいと評判の後輩達からは、
“お付き合いしていないなら、いつも一緒にいないでください!”
と怒られ、
クラスメイトの男子からは
“え?お前らまだ付き合ってないの?”
と呆れられていた。
周りに何と言われても、
自分の想いに気付いても、
今はまだこのままでいたいとカガリは思っていた。
だから気付かなかったのだ、
想いの雫たちがいつしかいっぱいになって、今にもこぼれ落ちそうになっていることに。
あれは何の話の流れからそうなったのか分からない。
その日は、いつも一緒に帰る弟のキラがいなくて、彼と2人きりの帰り道。
抜ける様な青空に、ほんのりと秋が薫る風。
『本当に付き合っちゃおうか、私達。』
あまりにも自然に出た自分の言葉にカガリ自身が驚いた。
隣の彼も驚いた瞳でこちらを見ている。
精一杯の勇気で、カガリは願いにも似た言葉を続けた。
『私、アスランともっと一緒にいたいんだ。』
彼が微笑んだ。
紛れもなく、カガリが大好きな笑顔だった、穏やかな。
『ありがとう、カガリ。
でもーー』
コップの水が溢れたのは、最後の一滴の雫のせいではない。
これまで降り注いだ幾つもの雫が、そこにあったから。
そしてその雫は、誰にも止められないから。
もう、受け止められないと分かっていても。
『ごめん。
俺はラクスの側にいたいから。』
それが、カガリが真正面から見た最後のアスランの笑顔になった。
あれから、アスランとどんな会話をしたのか覚えていない。
何とか辿り着いた自分の部屋、糸が切れた様にベッドに沈んだ。
初めての失恋にどうしていいのか分からず、
止まらない想いが容赦なく胸を刺して、
痛くて痛くて涙が止まらなくて。
夕食の時間になっても部屋を出てこないカガリを心配したのだろう、
呑気な声で“今夜はハンバーグだってぇ♪”と部屋に入ってきたキラが、
驚きに固まった顔を良く覚えてる。
キラは何も聞かずに優しく頭を撫でてくれた。
そのまま泣いて夜を明かして、当然目元は真っ赤に腫れて、
翌日は学校を休まざるを得なくて。
このままじゃダメだと、バレー部で鍛えた根性で喝を入れても
涙が次々に溢れてきてベッドを抜け出せず、
“どうしよう、どうしよう”そんな言葉ばかりが頭をぐるぐると回って。
泣き虫なのはキラの方で、滅多な事では泣かなかったカガリは、
いざ泣いてしまった時の対処法が分からなかった。
だから、幼い子供のように涙が出ては目を擦っていた。
控え目なノックの後に顔を出したキラ。
“フレイとミリィがお見舞いに来てくれたよ。”と、言っていたけれど、
キラの事だ、私のために連れてきてくれたんだと直ぐに分かった。
『もう、ひっどい顔ね!』
『プリン買ってきたの、一緒に食べましょ。』
フレイとミリィに泣きついて、全部話して。
心の整理何て出来ないけれど
今の自分の立ち位置と、今自分がすべき事ははっきりとした。
だから次の日には学校に戻る事が出来た。
目元の赤味は引かなかったから、フレイに教えてもらったメイクで完璧に隠した。
友人やクラスメイトの心配の声に笑顔で応える。
“うん、大丈夫。今まで通り、ちゃんと普通に出来てる。”そう自分を鼓舞するように頷いた時、
理系特進クラスのキラとアスランが見えた。
心配そうなアスランの顔、その横のキラの方が泣きそうな程心配そう顔をしていて、
カガリは悟った、キラは全部わかってくれていたんだと。
その優しさがカガリを強くしたのを、きっとキラは今も知らないんだろう。
『おはよう、アスラン。
心配かけちゃってごめんな。
でも、もう大丈夫だから!』
そう、もう全部大丈夫なんだ。
今まで通り、
何も変わらない、
何も変えない。
『良かった。』
ほっとしたようなアスランの声。
きっと、大好きな笑顔を浮かべているんだろう、
だけどカガリはそれを直視することはできなくて、そっと視線をキラにずらした。
するとキラが全てを受け止めるように頷いてくれて、
思わずカガリはキラに抱きついたのだ。
1日目は乗り切る事が出来たけど、だからと言って“今まで通りの毎日”が戻る訳じゃなかった。
アスランへの想いの雫が止まることは無くて、
心の整理はいつまでも付かなくて、
赤くなった目元を隠すためのナチュラルメイクの腕は
フレイに褒められる程に上達した。
当然、アスランと一緒にいる時間は減っていった。
キラがさりげなくそうしてくれていたようだ。
受験が都合の良い言い分けになったのは助かった。
アスランと普通に顔を合わせること、
それと同じくらい辛かったのは、
『カガリ、俺と付き合ってくれないか。
ずっと好きだったんだ、お前のこと。』
卒業までのカウントダウンが始まると、カガリは告白される機会が増えた。
真っ直ぐに向けられた瞳がいつもカガリの胸を締め付けた。
カガリには痛い程分かるから、
どうしても溢れてしまう想いも、踏み出す勇気も、
報われない想いも、願いも、未来も、
それに向き合う痛みもーー
『ありがとう。
でも、ごめんな。』
カガリはそう言うのが精一杯だった。
偶然にも、アスランに言われたのと同じ言葉。
あの日の痛みがフラッシュバックするだけじゃない、
アスランへの罪悪感に、ぐっと喉元が詰まる。
あの時、私からあんな事を言われて、きっとアスランはこんな気持ちになったんだーー
カガリの一言で、毎回相手はあっさりと引き下がった。
いや、引き下がらざるを得なかったのだ。
何故なら、泣き出しそうな程悲しげな顔をしていたのはカガリの方だったから。
告白タイムが終わったら、こっそり隠れていたキラがいつもカガリを抱きしめてくれた。
“良く頑張ったね。”と、頭を撫でられれば、涙を我慢する事なんて無理だった。
あの時、キラとフレイとミリィがいなければ、
きっとアスランとの高校生活を乗り切る事なんて出来なかっただろう。
みんなに感謝しつつも、カガリは“このままじゃダメだ!”と自分を叱咤し、
前へ進もうとがむしゃらに頑張った。
カガリは当初、キラとアスランと同じオーブ最高峰の国立大を志望していたが、
志望校を変えフレイとミリィと同じ私立大に進学した。
元々国際政治に興味があったカガリは、大学1年生の後期にはスカンジナビアへ留学した。
アスランへの想いを断ち切るためではなく、とにかく前へ進むためだった。
当初留学は1年間の予定であったが、スカンジナビアでの生活と学びにどんどん惹かれ、
そのまま留学先の大学へ編入し、父親であるウズミの系列会社のスカンジナビア支社に就職したのだ。
前へ、前へ。
そう思ってきたけれど、
想いの雫は止まらずに、
今もこの胸に溢れ続けている。
ふとした瞬間に聞こえる雫の音が
胸を締め付ける。
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リハビリがてら作成したパロディですが、
数名の読者さまにはお気に召していただけたようで
ほっとしています。
さて、カガリさんが後ろ向きな理由…
原因はアスランっていう…(-ω-;)
カガリさんは真っ直ぐにアスランの事が好きで好きで忘れられなくて、
今でも胸を痛めています(T^T)。
今回は高校生の頃のエピソードだったのですが、
次回は現代に戻ります。
パロディらしくドタバタな展開を予定していますので、
楽しんでいただければ幸いです。
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