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雫の音が、聴こえる。
ひとつ。
また、ひとつ。
滴る雫はいつかコップを満たして、
最後の一滴で
淵から水が溢れ
こぼれ落ちる。
でも水がこぼれたのは、
最後の一滴が原因じゃない。
止まらない雫が、
数え切れない程の雫たちが、
ここにあるから。
そして次の雫が、
いくつもの雫が、
きっとこの世界に落とされる。
誰にも受け止められないことを
知りながら。
雫の音 ー Shizuku no ne ー 1
ひとつ。
また、ひとつ。
滴る雫はいつかコップを満たして、
最後の一滴で
淵から水が溢れ
こぼれ落ちる。
でも水がこぼれたのは、
最後の一滴が原因じゃない。
止まらない雫が、
数え切れない程の雫たちが、
ここにあるから。
そして次の雫が、
いくつもの雫が、
きっとこの世界に落とされる。
誰にも受け止められないことを
知りながら。
雫の音 ー Shizuku no ne ー 1
目覚めて目に入った天井は見慣れたものではなくて、
ぼんやりとした頭で、カガリはポツンと呟いた。
「そっか、エリカのお家だっけ、ここ。」
カガリは時計を確認すると、ネコのように伸びやかにリビングへと向かった。
カガリが、父の部下であり姉のように慕うエリカの家に住むようになったのは3日前。
大学生1年生の頃、スカンジナビアに留学しそのまま就職もしたカガリが、
オーブ本社へ短期出向になったことがきっかけだ。
9年振りにオーブに帰国したのだから実家へ戻っておいでと父は言ってくれたけど、
カガリはエリカの申し出に乗っかった。
『3カ月間、家を預かってくれないかしら?』
エリカのぶっ飛んだ性格を知るカガリは、その申し出に噴き出した。
『夫の赴任先に3カ月間だけ行くことにしたのよ、リゾートを兼ねて、ね♪
ちょうどカガリちゃんの出向期間と重なるし、どうかしら?
家具家電付き、セキュリティは万全、駅近マンションの最上階って、ナカナカ良い条件でしょ?
もちろん、私たちが留守の間管理してもらうんだもの、家賃はいらないわ。
ただし、1つだけルールを守ってちょうだいね――』
カガリは、オーブ本社への出向期間が終了後すぐにスカンジナビアへ戻る心積もりでいたため、
エリカの申し出は正直ありがたかった。
あれから何年も経つけれど、
――オーブには思い出が多すぎるから。
まだ忘れ得ぬ想いがふわりと薫って
カガリは苦みを帯びた笑みを浮かべる。
ほら、また。
雫の音が聴こえた。
エリカから預かった鍵でドアを閉めて、
エレベーターを待ちながら、ふとお隣さんのドアが目に入った。
エリカからのたった一つのルール、それは…
『男を連れ込まないこと!
だって、カガリちゃんと彼氏がベッドやソファーで×××しちゃったら…。』
『そんな事するかよっ!
だいたい、彼氏なんていないし、欲しいとも思ってないから!』
間髪入れずにカガリが反論すると、
エリカは”ふふっ”と笑みをこぼした。
『えぇ、カガリちゃんの事は信頼してるわ。
でも、彼氏くらいつくってもいいと思うわよ。
恋って、いいものよ。』
肩を竦めるしかないカガリにエリカは、ポムと両手をたたいた。
『そうそう、お隣さんなんてどうかしら?
今時珍しいくらいの誠実な青年よ、イケメンだしね♪』
エリカのウィンクがさく裂した。
カガリがげんなりとした顔をしているのをスルーして、エリカは続ける。
『女の子はもちろん、お友達を呼んでる所も見たことないわ…。
あ、引きこもりって意味じゃなくて、物静かと言うか…、
夜空に冴える月ってイメージ?
だからね、太陽みたいにキラキラのカガリちゃんにぴったりだと思うのよ!』
と、力説するエリカに、カガリは内心”月と太陽って、水と油みたいなもんじゃないのか?”と
ツッコミを入れたのを覚えている。
引っ越してきた当初、両隣と直下の部屋には挨拶へ行ったが、
エリカの言うイケメンのお隣さんは留守で会えずにいた。
――今夜もう一度行ってみよう。
どんなイケメンが住んでいようと、
例えば人気の俳優やモデルが隣に住んでいようと
――悪いな、エリカ。
恋なんて始まる訳ないだよ。
――もう、どうしようも無いんだ、
この想いは…。
カガリは胸の痛みを飲み込んだ。
何年経っても慣れることの無い痛みを。
どうしようも無いと分かり切っていても、
溢れる想いは止められず、
こぼれる雫を受け止められず、
ただ流れていくだけで。
――きっと、ずっとこのままだから、私は。
どうしようも無い想いをどうすることも出来ないからオーブを飛び出して、
留学先のスカンジナビアで何度も恋をしようとして
何人かと頑張ってお付き合いをしてみても、
この想いは消えないんだということを思い知るだけだった。
そっとカガリは胸に手を当てる。
――だからこのまま、この想いと一緒に生きていくって決めたんだ。
もう叶わない恋だとしても。
ーーーーーーーーーーーーー
初めてのパロディでドキドキですが、ゆるーくお楽しみいただければ幸いです。
カガリは27歳くらいの設定です。
カガリさんが後ろ向きですが、それには理由があります。
それは次回、明らかになっていきます。
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目覚めて目に入った天井は見慣れたものではなくて、
ぼんやりとした頭で、カガリはポツンと呟いた。
「そっか、エリカのお家だっけ、ここ。」
カガリは時計を確認すると、ネコのように伸びやかにリビングへと向かった。
カガリが、父の部下であり姉のように慕うエリカの家に住むようになったのは3日前。
大学生1年生の頃、スカンジナビアに留学しそのまま就職もしたカガリが、
オーブ本社へ短期出向になったことがきっかけだ。
9年振りにオーブに帰国したのだから実家へ戻っておいでと父は言ってくれたけど、
カガリはエリカの申し出に乗っかった。
『3カ月間、家を預かってくれないかしら?』
エリカのぶっ飛んだ性格を知るカガリは、その申し出に噴き出した。
『夫の赴任先に3カ月間だけ行くことにしたのよ、リゾートを兼ねて、ね♪
ちょうどカガリちゃんの出向期間と重なるし、どうかしら?
家具家電付き、セキュリティは万全、駅近マンションの最上階って、ナカナカ良い条件でしょ?
もちろん、私たちが留守の間管理してもらうんだもの、家賃はいらないわ。
ただし、1つだけルールを守ってちょうだいね――』
カガリは、オーブ本社への出向期間が終了後すぐにスカンジナビアへ戻る心積もりでいたため、
エリカの申し出は正直ありがたかった。
あれから何年も経つけれど、
――オーブには思い出が多すぎるから。
まだ忘れ得ぬ想いがふわりと薫って
カガリは苦みを帯びた笑みを浮かべる。
ほら、また。
雫の音が聴こえた。
エリカから預かった鍵でドアを閉めて、
エレベーターを待ちながら、ふとお隣さんのドアが目に入った。
エリカからのたった一つのルール、それは…
『男を連れ込まないこと!
だって、カガリちゃんと彼氏がベッドやソファーで×××しちゃったら…。』
『そんな事するかよっ!
だいたい、彼氏なんていないし、欲しいとも思ってないから!』
間髪入れずにカガリが反論すると、
エリカは”ふふっ”と笑みをこぼした。
『えぇ、カガリちゃんの事は信頼してるわ。
でも、彼氏くらいつくってもいいと思うわよ。
恋って、いいものよ。』
肩を竦めるしかないカガリにエリカは、ポムと両手をたたいた。
『そうそう、お隣さんなんてどうかしら?
今時珍しいくらいの誠実な青年よ、イケメンだしね♪』
エリカのウィンクがさく裂した。
カガリがげんなりとした顔をしているのをスルーして、エリカは続ける。
『女の子はもちろん、お友達を呼んでる所も見たことないわ…。
あ、引きこもりって意味じゃなくて、物静かと言うか…、
夜空に冴える月ってイメージ?
だからね、太陽みたいにキラキラのカガリちゃんにぴったりだと思うのよ!』
と、力説するエリカに、カガリは内心”月と太陽って、水と油みたいなもんじゃないのか?”と
ツッコミを入れたのを覚えている。
引っ越してきた当初、両隣と直下の部屋には挨拶へ行ったが、
エリカの言うイケメンのお隣さんは留守で会えずにいた。
――今夜もう一度行ってみよう。
どんなイケメンが住んでいようと、
例えば人気の俳優やモデルが隣に住んでいようと
――悪いな、エリカ。
恋なんて始まる訳ないだよ。
――もう、どうしようも無いんだ、
この想いは…。
カガリは胸の痛みを飲み込んだ。
何年経っても慣れることの無い痛みを。
どうしようも無いと分かり切っていても、
溢れる想いは止められず、
こぼれる雫を受け止められず、
ただ流れていくだけで。
――きっと、ずっとこのままだから、私は。
どうしようも無い想いをどうすることも出来ないからオーブを飛び出して、
留学先のスカンジナビアで何度も恋をしようとして
何人かと頑張ってお付き合いをしてみても、
この想いは消えないんだということを思い知るだけだった。
そっとカガリは胸に手を当てる。
――だからこのまま、この想いと一緒に生きていくって決めたんだ。
もう叶わない恋だとしても。
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初めてのパロディでドキドキですが、ゆるーくお楽しみいただければ幸いです。
カガリは27歳くらいの設定です。
カガリさんが後ろ向きですが、それには理由があります。
それは次回、明らかになっていきます。
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