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soranokizunaのカケラたちや筆者のひとりごとを さらさらと ゆらゆらと
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3月8日 運命の出会い記念SS ②

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xiaoxue




拍手[12回]

「どうぞ。」

 

「失礼します。」

 

その声にカガリの肩にかかる髪が跳ねたのは

きっと風が吹いたからだと、

現れたザラ准将に思わせる程カガリは落ち着き払った眼差しで迎えた。

 

「どうした、緊急の案件か。

それとも、決裁漏れがあったか。」

 

そう問えば、ザラ准将はすっと起案を差し出した。

 

「緊急ではありませんが、

代表のお時間のある間にご確認いただけたら、と。」

 

穏やかで誠実な響きを持つ声が返ってきて、

思わず瞳を閉じて胸に刻みたくなる。

だからカガリは、ゆっくりと瞬きをして

准将を見上げた。

 

「あぁ、今は大丈夫だ。」

 

 

 

ザラ准将が持ってくる起案はいつも、寸分の隙が無い程完璧で

口頭で補われる説明は簡潔明瞭で

雨が大地に吸い込まれるように頭に入るから不思議だ。

 

――ほんっと、こいつの仕事は

   可愛げ無いなぁ。

 

と、カガリが心の中で呟けば、

 

「何か・・・?」

 

ザラ准将がこちらへ視線を滑らせるから

 

――なんでこんな時だけ鋭いんだよっ!!

 

と内心でつっこみを入れながら

カガリは小さく咳払いをした。

 

「いや、何でも無い。」

 

そう言ったのに、

みればザラ准将は微かに笑みを浮かべたように見えて、

ただそれだけで、

気のせいかもしてないのに

胸が軋むほど痛むから、

カガリは起案に目を戻した。

 

そうしなければ、言ってしまいそうだった。

 

“今日は何の日か、覚えてる?”、と。

 

“伝えたいことがあるんだ”、と。

 

“アスラン”って、

名前を呼んで、

 

“ありがとう“、と。

 

縛めなければならない想いに

手を伸ばしてしまいそうになるから・・・。

 

左壁面の開け放たれた窓から涼やかな風が吹く、

その度にアスランの香りにつつまれて、

水のように溢れる想いを鎮めるように

カガリはアスランに気付かれないようにそっと、深呼吸した。

 

 

 

と、強い風に文書がめくられる乾いた音が響いて、

ザラ准将の淀み無い説明が途切れる。

 

「窓を閉めましょうか。」

 

と、カガリの傍を離れた准将に、頼む、と声を掛けて

そしてふと薫る匂いにカガリは瞳を閉じた。

 

「雨の匂いがする・・・。」

 

「そうですね・・・。

雲の流れが早いので、雨になるかもしれません。」

 

そう応えたきり、窓枠に手を置いたまま

アスランが何を見ていたのか、

背中しか見えないカガリには

分からなかった。

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「どうぞ。」

 

「失礼します。」

 

その声にカガリの肩にかかる髪が跳ねたのは

きっと風が吹いたからだと、

現れたザラ准将に思わせる程カガリは落ち着き払った眼差しで迎えた。

 

「どうした、緊急の案件か。

それとも、決裁漏れがあったか。」

 

そう問えば、ザラ准将はすっと起案を差し出した。

 

「緊急ではありませんが、

代表のお時間のある間にご確認いただけたら、と。」

 

穏やかで誠実な響きを持つ声が返ってきて、

思わず瞳を閉じて胸に刻みたくなる。

だからカガリは、ゆっくりと瞬きをして

准将を見上げた。

 

「あぁ、今は大丈夫だ。」

 

 

 

ザラ准将が持ってくる起案はいつも、寸分の隙が無い程完璧で

口頭で補われる説明は簡潔明瞭で

雨が大地に吸い込まれるように頭に入るから不思議だ。

 

――ほんっと、こいつの仕事は

   可愛げ無いなぁ。

 

と、カガリが心の中で呟けば、

 

「何か・・・?」

 

ザラ准将がこちらへ視線を滑らせるから

 

――なんでこんな時だけ鋭いんだよっ!!

 

と内心でつっこみを入れながら

カガリは小さく咳払いをした。

 

「いや、何でも無い。」

 

そう言ったのに、

みればザラ准将は微かに笑みを浮かべたように見えて、

ただそれだけで、

気のせいかもしてないのに

胸が軋むほど痛むから、

カガリは起案に目を戻した。

 

そうしなければ、言ってしまいそうだった。

 

“今日は何の日か、覚えてる?”、と。

 

“伝えたいことがあるんだ”、と。

 

“アスラン”って、

名前を呼んで、

 

“ありがとう“、と。

 

縛めなければならない想いに

手を伸ばしてしまいそうになるから・・・。

 

左壁面の開け放たれた窓から涼やかな風が吹く、

その度にアスランの香りにつつまれて、

水のように溢れる想いを鎮めるように

カガリはアスランに気付かれないようにそっと、深呼吸した。

 

 

 

と、強い風に文書がめくられる乾いた音が響いて、

ザラ准将の淀み無い説明が途切れる。

 

「窓を閉めましょうか。」

 

と、カガリの傍を離れた准将に、頼む、と声を掛けて

そしてふと薫る匂いにカガリは瞳を閉じた。

 

「雨の匂いがする・・・。」

 

「そうですね・・・。

雲の流れが早いので、雨になるかもしれません。」

 

そう応えたきり、窓枠に手を置いたまま

アスランが何を見ていたのか、

背中しか見えないカガリには

分からなかった。

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