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soranokizunaのカケラたちや筆者のひとりごとを さらさらと ゆらゆらと
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【アスカガSS】覚悟の響き おまけ② アスラン視点

こんにちは。

筆者のつたない文章をお読みくださった方へ
また拍手まで下さった心お優しい方へ
感謝の気持ちでいっぱいです。
本当にありがとうございます。

この、アスカガSS「覚悟の響き」シリーズ最後を飾るのは、
『生きて、護りぬきます。』と言ってのけた、アスランです。

彼はあの時、何を思ってこの言葉を言ったのでしょうか。

そして、彼はカガリが浮かべた、恋する女の子な表情を見ることはできたのでしょうか。

そして、キラ兄様の天罰やいかに!(←おい!

SSの主役が”おまけ”で登場って時点で、
ちょこっとアスランがかわいそうかもしれませんが(笑。

物語は、以下の物語はこちらからをクリックしてお読みください。

これまでお読みくださった全ての方に感謝を込めて、
お1人でもお楽しみいただける方がいらっしゃることを祈って・・・。

xiaocue

拍手[13回]

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【おまけ②アスラン視点】  ~君は今、何を思ってる?~





会議室の扉を蹴破るような音がして、カガリが来たのだと分かった。

それでも、向けられた幕僚長の眼光があまりに鋭く、
俺自身の矜持が、視線を逸らすことを許さなかった。
一歩も引く気は無かった、
カガリを護ると誓ったから。
そのために、俺はあらゆる手段を排除しない。

幕僚長に提示された条件。
“ 死ぬ気で護れ。 ”
以前の俺なら、頷くことができただろう。
カガリを護るためなら、迷わず命を差し出したと思う。
でも、カガリが生きる意味を教えてくれたから、
それは今も俺の中で燈し火のように照らしてくれるから、
だから俺は、自分を曲げることは出来なかった。

『その条件は、のめません。』

曲げればそこで、全てがまるくおさまると分かっていても。
カガリが教えてくれた真実を、否定することは、俺には出来ない。
生きていく事の方が戦いだ、と。

『生きて、護り抜きます。』

結果として、幕僚長の器の大きさに救われた。
『全く、ザラ准将は可愛げが無いっ。』
そう言って、豪快に笑ってくださったお陰で、反対派、賛成派の双方にしこりを残さずに
終えることができた。
『御手柔らかに、お願いします。』
そう返して、俺はさりげなさを装ってカガリへ視線を向けた。
この場はまるく収まったが、終焉と結果をカガリがどう捉えたかは分からない。
だからせめて知りたかった、カガリの表情を。

 

君は今、何を思ってる?

 

視線の先で、行き交う影の間から、微かに俯いたカガリが見えた。
どうしたのだろう・・・。
その顔が見たい、出来るなら今すぐ君の元へ駆けて。
しかしそんな事が叶う筈もなく、
カガリの表情は、肩で跳ねた髪に隠されて窺い知ることは出来ない。
やはり、生きて護り抜くなど、傲慢な言葉だっただろうか。
たとえそれが、俺の真実であっても。
不安が視線を惑わせて、何事も無かった事として逸らそうとした時、
カガリが頬に掛かった髪を耳にかけた。
ただそれだけの仕草で色気を振りまくから、平静を装うこちらの心臓が持たない。
が、それ以上に心を揺さぶったのは、
カガリの表情だった。

頬を染め、瞳をほの赤く潤ませて・・・
左手を右手で包み込んで、ぎゅっと胸に押し当てて・・・

――え・・・

鼓動が胸を強く打って、そのまま息が止まったと思った。
開放感に満ちた会議室の音が一瞬で消え去って、色彩さえも抜け落ちて、
ただ、カガリだけがあまりに鮮やかに見えるから、
眩い光にそうするように、俺は瞳を細めた。

と、隣席の少将から肩を叩かれ振り向くと、
穏やかな笑みを貼り付けて頭を下げた。
が、瞳に一瞬で焼きついた、あのカガリの姿が離れない。
何処か儚げで、
思わず抱きしめたくなるような・・・。
もう一度確かめたくて視線を流せば、
そこにはもう俺の見た“カガリ”の姿は無くて、
威厳に満ちた身のこなしで、頭を下げる代表首長がいた。
凛々しく、美しい、姿――

 

あれは、都合の良い幻だったのだろうか・・・。
そんなことをぼんやりと思っていると、豪快に肩を抱かれた衝撃で我に返った。
「よぅ、ザラ准将。」
衝撃の主は幕僚長で、やはり豪快に笑っている。
「今夜は付き合えよ~、とことん飲むぞっ!!」
「はいっ。」
やはりこの方の器は大きいと、改めて実感させられた。
こうして反対派の筆頭である幕僚長と、
最終的に賛成派のような立ち居地となった俺が打ち解けることは、
即ち両陣営の和解を意味するからだ。

これを契機に、俺は幕僚長に豪快に可愛がられる日々を送ることになるのだが・・・
それはもっと先の話。

 

 


髪から滴る水滴がシャツに染込み、
俺は無造作に髪をタオルドライしながら
一気にミネラルウォーターを煽った。

――幕僚長・・・、つわものだ・・・。

自宅に戻れた頃には深夜を回っていた。
父上はこよなくワインを愛する人で、母上は生粋の酒豪だったらしく、
その遺伝子を引く俺も酒に弱い訳ではない。
しかし、あの幕僚長の酒豪っぷりには完敗だった。

――二日酔いで業務に支障が出そうだな。

そこまで思考したが、逆にその方がいいのかもしれないと思い返した。
会議では、俺が幕僚長を論破した形になったが、
酒では幕僚長に完敗であったと、その方が笑いの種になり、場が和むであろうと。

――こうして、もっと沢山の人たちと関係性を築いていけたら・・・

そんな希望を胸に自ずと顔が緩んで・・・、



しかし一気に引き締まった。

「アスラン、起きてる~?」

端末から聴こえてくるキラの声に、俺は空のボトルを握りつぶした。
ハッキングで、人のプライベート回線を勝手に繋ぐなっ!!
俺は冷蔵庫から新たにミネラルウォーターを取り出すと、溜息交じりに親友の名を呼んだ。

「あ、いたいた~♪
ラクス~、アスランやっぱりお酒飲まされてたよ~。」

そんなキラの言葉に、俺は違和感を覚える。
なぜ、“やっぱり”なのか。
まさか・・・。
俺は酔いが回った頭をフル回転させながらデスクについた。

「キラ・・・、やっぱりってどういう・・・。」

「さっきまでね、カガリと話してたんだよ~。」

あっけらかんと笑う親友に、俺は息が止まった。
何・・・、カガリと・・・。
跳ねた心臓がくすぐったくて、ふわふわとした感情が胸を満たす。
カガリは、何と言っていたんだろう・・・。
今日のこと・・・。
あの、表情は・・・、俺の見間違いだったのか・・・。
知りえぬまま終わろうとしていた言葉が次々に溢れ出して制御できない。

「カガリが何て言ってたか、知りたいでしょ~。」

そう言って、悪戯っぽい笑みを浮かべたキラに、俺はもう一つの違和感を抱く。
なんだか目元が朱に染まっているような・・・。
その答えは、隣から優雅な手付きでグラスを差し出したラクスによって判明する。

「キラ、カルアミルクのおかわりですわ。」

こいつら、飲んでるな・・・。
酒に関してラクスはザルであるが、キラは手に負えないほど悪酔いするタイプだ。
よくよく画面を注視すれば、後ろのローテーブルに並ぶ3本のワインは全て空になっている。
話が余計にややこしくなりそうな予感がして、俺はシャワーを浴びたばかりだというのに
背中に嫌な汗を感じた。
時間が晩いことを理由に、一度端末を切ろうか・・・
だが、今日のことをカガリが何と言っていたのか、知りたいというのも本音で・・・
そんな迷いを先読みしたように、キラは朗らかな笑みを浮かべてアスランに告げた。

「カガリね、顔あかくしちゃってね、
目なんか潤んじゃってさぁ、
もう可愛かったんだから。」
 

ねーっと声をハモらせて微笑みあう画面向こうの2人をよそに、
俺は俄かに頬がほてるのを感じた。
やっぱり、あの時見たカガリの表情は、俺の見間違いなんかじゃなかった・・・
と、結論付けてもいいのだろうか・・・。
急速に喉が渇いて、俺はボトルのキャップを外して喉を潤わせる。
清涼な一筋が体内を貫いて、それでも熱をもてあそぶように熱い息を吐き出した。
どうして・・・、カガリはあんな表情を・・・。
知りたい・・・、
知りたい・・・。

 

「カガリに・・・、何かあったのか・・・?」

そう問うた声は、動揺を映したように酷く掠れていた。

「カガリがね、今日は大変だったって、言ってたよ。」

あぁ・・・。
あの会議に対して、やはり良い印象は抱かないよな。
音も無く沈みかけた意識は、続くキラの言葉で一気に跳ね上がる。

「それからね、
アスランが格好良かったって~。」

・・・。

え・・・。

・・・。

今、何て言った?

「だーかーらー。
アスランが格好良かったって。
もー、カガリったら耳まであかくなっちゃってさ~。」


 

多分、

顔が赤いのは、

俺の方だ・・・。


 

鼓動は痛い程胸を強く打つのに、
その音色は何処かくすぐったくて、
散々幕僚長に飲まされた体は泥のように重いはずなのに、
理由無い浮遊感を覚えて
ボトルを持つ指先がチリチリとこそばゆい。
 

会議室の行き交う人の影から垣間見たカガリの表情は
きっと、見間違いなんかじゃなかった。

君はあの時、何を思っていた――?

そして君は今、何を思ってる――?
 

「その時、カガリはこう思ったそうです。」

まるで俺の思考を読んだかのように続けられた言葉は
キラとラクスの声がぴたりと重なっていた。

 

「「アスランみたく、格好良くなりたいぞっ!」」

 

・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・。

 

そしてキラの爆笑が、俺の部屋中に響いて、
俺は固まったまま動けず、
その後、延々とキラとラクスにからかわれ続けたのは、言うまでも無い。

 

 

* * * * *

【あとがき】

アスランにはちょっとかわいそうですが・・・
カガリなら大真面目に「格好良くなりたいぞっ!!」と言いそうで(笑。

そんなちょこっとズレたカガリと、振り回されるアスランと、
キラとラクスにいじられるアスランと。

格好良いばっかりじゃない、こんなアスランもいいかなと思います。

駄文にお付き合いくださいまして、ありがとうございました。
次回は、物語の続きを真面目に更新いたします。



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【アスカガSS】覚悟の響き おまけ① キラ視点

こんにちは。

筆者の拙い文章でございますが、
お読みくださった方、拍手を下さった心優しい方、
本当にありがとうございます。
心から嬉しく思っております。

さて、今回はおまけ①のキラ視点、
続いて、おまけ②のアスラン視点をUPいたします。

キラ視点はちょこっとコメディータッチでお送りいたします。
物語は、以下の物語はこちらからをクリックして、お読みください。

お1人でもお楽しみいただける方がいらっしゃることを祈って・・・。

xiaoxue

拍手[13回]







おまけ①【キラ視点】 ~だから私も・・・~






やっぱり、双子のシンクロってあるのかなって思う。
なんとなく、カガリが元気無い時とか、体調悪い時とか、
分かっちゃうんだ。
たとえ、オーブから遠く離れたプラントに居ても。

「カガリ、何かあったでしょ。」

モニター越しにカガリにそう問えば、
素直に頬を染めちゃったりして・・・。

――あー、アスランと何かあったんだ・・・。

僕は直ぐにそう思った。
妹の幸せを心から祈る兄としては、喜ばしいことであるはずなのに、
どうしてだろう、何処か釈然としない。

う~とか、まるで子猫が唸るような声をあげて、ぱちぱちと瞬きする仕草は、
とてもオーブの代表首長とは思えない。
はっきり言って、恋する女の子。
素直に可愛いなぁと思いながら、まだアスランを想い続けていることに安堵し、
そしてやっぱり、釈然としないのだ。

「で、何があったの。
アスランには絶対に言わないからさ。」

うん、言わないよ。
ラクスには言うけど。
そう思った時、ちょうどラクスが髪をタオルドライしながら現れた。

「カガリ、どうなさったのですか。」

「うん・・・、」

ラクスが問えばカガリは素直に話し出す、
僕はちょっと切ない気持ちを飲み込んで耳を傾けた。
今日の切ないポイント1。

「ちょっとな、私の発言が切欠で、軍が割れちゃって・・・。」

え?それって大丈夫?
僕は瞳を丸くしたが、
カガリが髪を耳にかける仕草が妙に女っぽくて
事の重大さとはかけ離れたように見えた。

「それは、さぞ大変だったことでしょう。」

ラクスの、心に寄り添うような声に、
カガリは肩にもたれるような声で応えた。
僕は、ラクスとカガリの友情にほのぼのとした気持ちを覚えながらも、
やはり切ない気持ちを抱いた。
これで、切ないポイント2。

「うん。反省してる。
あっ、でも、大丈夫だったんだ。」

「誰かが、おさめてくださったのですか。」

ラクスの心を引き出すような声に、僕は目を瞠る。
やっぱりラクスはこういう所、すごいと思う。

画面の向こうでは、カガリがほてった頬を誤魔化すように手の甲で擦っている。
あぁ、もしかして・・・
もしかしなくても・・・

「うん・・・、
アスランが・・・。」

やっぱり・・・。
切ないポイント3。
僕はこぼれそうになる溜息をカルアミルクで飲み込んで、
その横でラクスは両手を合わせて無邪気に喜んでいる。
でも、続く言葉に僕は、カルアミルクを危うく噴出しそうになった。

「あのな・・・、
アスランが・・・その・・・、格好良かったんだ・・・。」

え・・・?
今、なんつった・・・?
誰が格好良いって?
え?
誰?誰?
まさかあの、へたれハツカネズミの事じゃないよね。

「それは、どういうことでしょうか。」

きょとんと瞳をまるくした愛らしい恋人がいて、
僕はなんとなく、これ以上聴きたくないような気持ちだった。
だって、なんとなく・・・、
格好良いアスランって・・・・・・癪にさわるじゃんっ!

「えと・・・。」

言葉に詰まって潤んだ瞳を泳がせながら、きゅっと掌を握って・・・
あぁもう、恋するカガリって可愛いんだよな・・・。
その仕草に、切ないポイント4。

「私がな、暁に乗って戦う時はな・・・。」

あー、カガリそんな事言ったんだ。
そりゃ、軍のみなさん心配して暴動が起こるだろうに。
ほんっと、自分のことになると鈍感になるんだよね、カガリって。

「アスランが・・・言ったんだ。
みんなの前で。
“ 生きて、護り抜く ”って。」

そう言ったカガリの笑顔は、陽の光のように眩くて、
やっぱりアスランの事は癪にさわるけど、素直に僕は嬉しく思った。
2人は恋人から、カガリとアスランだけにしか出来ないような関係へ変わって、
それでも2人は想い合っているのだと、
僕は素直に安堵したんだ。
もうすぐ、2人はもう一度、手を取り合うことができるんじゃないかって。

でも、あれ~。
おかしいなぁ~、
こういう所だけ、僕とカガリはシンクロしないんだよね。

「でな・・・。」

そう言って、カガリは握った拳を一心に見詰めるようにしてぐっと力を込めて、
凛々しく顔を上げた。

「その・・・、羨ましかったんだっ!」

・・・え?
カガリ、今なんつった?
え?
ときめいちゃったり、したんじゃないの?
惚れ直しちゃってり、したんじゃないの?

「アスランが、羨ましかったのですか?」

おっとりとラクスが問うと、
カガリは小さな拳をぶんぶん振って強く頷いた。

「うんっ。
だからな、
私も格好良くなりたいぞっ!」

そう結論付けて、自分に自分で納得したように大きく頷いたカガリは、
スコールの後に広がるオーブの蒼い空のように晴れ渡った顔をしていた。

そして、
僕の釈然としない気持ちも、切ないポイントも全部チャラになった。

カガリのこういう、ちょっと鈍くて、
ちょっと思考がずれちゃうところが、
僕のツボだったりするのである。

 

さてと、カガリとおしゃべりを楽しんだら
“格好良かった彼”とも久しぶりに話そうかな。
僕のこの鬱憤を全~部ぶつけなくちゃ、釈然としないや。
え?全部チャラになったんじゃなかったかって?

もちろん、カガリに対してはね♪

 


「っ・・・・!」
調度その時、アスランは不意に走った寒気に両腕をさすった。





* * * * *
【あとがき】

今回はキラ視点で、ちょっと遊びの入った内容でした。

カガリの結論は「アスランのように格好良くなりたいぞ!」となりましたが、
こんな風にちょこっと思考がズレてしまうカガリで、
キラ兄様は救われるのでした。

キラの切ないポイントは類型加算されて、
“格好良かった彼”に謂れの無い天罰が下ることでしょう(笑。
しいて言うなら、「僕を切なくさせた罪」でしょうか?
さぞ、重~い罪なのでしょう(笑。

さて、続いておまけ②としてアスラン視点をUPいたしますので、
よろしければ併せてお楽しみください。

 



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こんにちは。


カガリ視点、いかがだったでしょうか。

アスランにときめくカガリが見たくて、カガリ視点を書きました。

本編後、カガリとアスランが代表と准将として、
オーブのために尽力する日々を過ごしていても、
きっとこんな風に、予期せぬタイミングで
どうしても相手に惹かれてしまうことが、あると思います。
そんな時、アスランとカガリは
その想いを表情に出すことも、相手に伝えることも、
きっと選ばないと思います。

今回のお話では、カガリはアスランへの想いを
懸命に、胸に仕舞います。
想いの深さだけ胸を刺す痛みは、どれ程のものでしょうか。
しかし、アスランを大切にしたいから
カガリは想いを胸に仕舞うことを選びました。

相手を大切する方法は人それぞれに沢山あって、
アスランとカガリの場合は、とても難しく、
絶えず痛みを伴う方法だと思います。
それでも大切にし続ける2人に、筆者は強さを感じます。

 

さて、次回はブログにて、今回のSSのおまけをUPします。
最強の彼等の登場です。

拍手[7回]


【アスカガSS】『覚悟の響き』のカガリ視点です。
今回で完結します!

アスランの言葉に、カガリは何を想ったのでしょうか。

本文は、以下の物語はこちからをクリックしてください。

お1人でもお楽しみいただける方がいらっしゃれば、幸いです。

拍手[17回]






覚悟の響き~心震わす響き~

 

 


はぁっ、はぁっ・・・

カガリは全速力で廊下を駆けながら、苦味を帯びた表情を歪めた。
脳裏に甦るのは、モエギの泣きそうな表情と、

『皆様から、口止めされておりましたので・・・カガリ様にはお伝えするなと・・・。』

ぽつりぽつりと零れた真実と、

『今、皆様は会議にご出席です・・・。
カガリ様が、暁でご出陣されることを、許すか否かをめぐって・・・。』

楽観的過ぎた自分の浅はかさと、

『あっ、皆様のことを責めないで下さいっ!!
カガリ様のことを大切に想うがこそ・・・っ!!』

そして、馬鹿が付く程篤すぎる、
部下たちの忠誠心だった。

――バカヤロウっ!!!

目的の会議室が目の前に迫り、
カガリは会議室の扉を蹴破った。

 


カガリは瞳を閉じて大きく息を吸い込んで、荒れる呼吸を強制的に沈めた。
開いた瞳の先に捉えた存在に、大きく心臓が跳ねる。

――ア・・・スラン・・・っ。

そしてアスランの視線の先を辿れば、そこには厳格に口元を引き結んだ幕僚長が立っていた。
鳥肌が立つような物々しい空気にカガリは唇を噛み、硬く拳を握り締めた。

『いざと言うときは、私も暁で出るからな。』

あの発言を何の覚悟も無く言った訳ではなかった。
オーブの為にもてる力の全てを注ぎたい、
その為に、今私に出来ることはオーブの代表首長として職務を全うすることであることは、
わかってる。
でも、もし、こんな私の力でも、出来ることがあるなら、
それが暁で戦場を駆けることであっても、
私はあらゆる手段を排除しない。
夢を叶える為に。
この夢は、私だけの夢じゃないから。

――ここにいる、みんなの、
   いや、もっと沢山。
オーブのみんなの夢だから・・・っ!


こんな風に、誰かの感情の波を立てたくて言った言葉ではなかった、
築き上げた信頼にひびを入れたかった訳じゃない、
それでも、自分の発言が招いた今という結果に、カガリは小さく首を振った。
滲みそうになる瞳を戒めるように細め、
何より先に状況確認をするために、中央に鎮座するキサカの元へ駆けた。
が、キサカは、そんなカガリの思考を先回りしたように、カガリの言葉を制した。
キサカによって静かにかざされた手からカガリは読み取る、
“ 結末を、見守れ ” 、と。
キサカの馳せる視線に倣うように顔を上げれば、
依然として対峙する幕僚長とアスランがそこにいた。

彼等だけが纏う、音の無い世界に響くのは
けたたましいまでの自分の鼓動。

幕僚長は日本刀のように冷涼な眼光を鋭く光らせ、
アスランは灼熱を帯びた眼差しを静かに向ける。

強く迷わず
互いに剣を構え、
貫くのは、信念――

それは、オーブの戦い方であると、
遠く響くようにカガリは感じた。
無意識に、左手を右手で包み込み
鼓膜を叩くような鼓動を抑えるように胸にあてた。

 

言葉も、呼吸さえも遮断する
沈黙が空間を支配する。

 

「条件がある。」

幕僚長の地を這うような声が、沈黙を切り裂いて、
カガリは息を詰めて幕僚長を見遣った。

「アスハ代表が、暁でご出陣される場合は、
死ぬ気で護れ。」

幕僚長が折れたことを示すこの発言に、
会議室の一方で歓声が上がり、他方で譲歩がもたらす特有の溜息が聞こえた。
しかし、カガリは驚愕に瞳を見開いた。

――違う・・・、人は、生きるために護るんだ・・・っ!!

まるで会議の幕が一気に下ろされたように、開放的な空気が流れこむ会議室を
カガリは慌てて見渡した。

――待てっ、みんな、違うっ!!

焦燥に埋め尽くされるように言葉は声にならず、
ただ、乾いた息遣いだけが唇に乗る。
違うと首を振った、その時だった。
アスランの声に、カガリは顔を上げた。

 

「その条件をのむことは、出来ません。」

幕僚長は眉間に険しい皺を刻み、
会議室からは驚愕と不快感を示すどよめきが湧き上がった。

――アスラン・・・。

アスランは、その空気に靡くことも染まることも無く、
静かに強く、射抜くように言葉を紡いだ。

「生きて、護りぬきます。」

 

揺ぎ無いアスランの覚悟が、響く。
カガリの心を、震わせる。
まるで優しく包み込むように。

灼熱を帯びる眼差しに、心強さを覚える。

何故だろう、どうすることも出来なかった。

無限の加速度で高鳴る鼓動も、
焦がれるように熱くなる胸も、
薫るような過去も、
泣きたいような衝動も、
胸に仕舞い続けた、アスランへの想いも。

 

“全く、ザラ准将は可愛げが無いっ。”
“御手柔らかに、お願いします。”
幕僚長とアスランの会話を遠くで聴きながら、
カガリはぎこちない仕草で、
手の甲で頬を擦った。

――きっと今、
顔、あかい・・・

――アスランの、せいだ・・・

――バカ・・・ヤロウ・・・

アスランの言葉が残光のように胸に残って、
頬を擦っても、擦っても、
熱が消えない。
消せない。

でも。

消せない想いがあるのなら
胸に仕舞わなくちゃ。

アスランに、見つからないように。
誰にも、気付かれないように。

早く。
傷つかないように、そっと。

カガリは息を詰めて、ぐっと下唇を噛んだ。
飲み込む想いの深さだけ胸を刺す痛みに、
歪みそうになる表情を隠すように俯いた。

 

 

何処からとも無く沸き起こった割れんばかりの拍手。
それは、平和の福音。
その音の源を一つ一つ確認するように、カガリは出席者ひとりひとりに面差しを向け、
そして深々と頭を下げた。
その様子に慌てた武官や文官らが、がたがたと派手な音を立てて立ち上がった。
代表、お顔を上げてください、と口々に言いながら。

「みんな、すまなかった。
私の言葉が足りなかったせいで。」

顔を上げたカガリの琥珀色の瞳には、アスランと同じ覚悟の威光が宿り、
凛と響く言葉は、恵の雨が大地を潤すように、彼等に染み渡っていく。

「そして、ありがとう。
私も、生きてこのオーブを護り抜く。
だからこれからも、力を貸してほしい。
共に、平和を
実現していこう。」

そして、スコールの後に広がる青空のように晴れやかな空気が
会議室を満たした。
 



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【アスカガSS】『覚悟の響き』のカガリ視点です。

『覚悟の響き』では、ムゥとマリューが
アスランの言葉を聴いたカガリの表情を見て
恋する女の子のようだったと言っていましたが、
その真相とは・・・?

なお、物語は以下の物語はこちらからをクリックして、
お読みください。

お1人でもお楽しみいただける方がいらっしゃれば、嬉しい限りです。

拍手[11回]









覚悟の響き~心震わす響き~




切欠は、何気ないことだったと思う。

『いざと言うときは、私も暁で出るからな。』

この言葉に嘘も偽りもないし、何かを示唆するつもりも無かった。
言葉のまま、私は、いざという時は暁で戦場を駆けるつもりだ。

戦場を駆けるだけが、私のすべきことではないことは、わかってる。
人それぞれに、得意なことがあって、力を注ぎたいと思うものがあって、
果たしたい夢がある。
私の場合は、オーブの代表首長として職務を全うすることであることも、
わかってる。

でも、こんな私の力でも、出来ることがあるなら、
私はあらゆる手段を排除しない。
夢を叶える為に。
この夢は、私だけの夢じゃないから。

でも・・・、
まさか、私の発言が引き金になってあんな事が起こるなんて想像もしなかった。

 


政務室で決算監査の膨大な資料をひとつひとつ読み込んでいく。
初めて代表首長に就いた年は、資料の何処に何が書いてあるのか、
そもそも書かれている数字の羅列が何を意味し、
そこから何と次年度を、未来を結ばなければならないか、
何も分からなかった。
それこそ、右も左も分からない赤子のような私に、秘書官等は根気強く指導してくれた。
カガリはPCの画面に表示していた電子資料から、隣に積まれた決裁に目を移した。
いくら電子化が進んでも、最終的な決裁は紙媒体にサインをすることで完了する。
全てにサインしなければ・・・と思うと同時に、
決算監査資料の内容が分かるようになればなる程、サインする手に想いが込められるようになった。
これだけの資料を作成するために、どれだけの人が動いたのか、
いや、もっと深く、
掲げた政策方針に向かい人が動いた結果がこの数字であり
この数字で、オーブの民の生活が豊かになったことか、
もっと豊かにするための足がかりにするために――

さらさらさら

決裁欄に万年筆を滑らせ、記されるサインから声は聴こえない。
それでも、この文字に込められる想いは、時を経るだけ膨らんでいく。

――よし、次っと。

そしてカガリは国防の方へと電子資料を繰った。

 

 

ここ2週間というもの、なにやら軍本部だけではなく行政府までもが騒がしかった。
何を騒いでいるのかと問うても誰も明確に応えてくれず、
そこに一抹の寂しさを感じたが、誰も何も伝えないのは気遣いからであろうと、
カガリはその気持ちに甘えることにした。
きっと、騒ぎもそろそろ落ち着くであろうと、悠長に構えていた。
まさか、その発端が自分の発言であるとは知らずに・・・。

――今日は・・・やけに静かだな。

それが嵐の前の静けさであることも気付かずに、
カガリは決算監査の資料に集中していた。

「忙しいところすまないが、ちょっといいか。」
カガリが軽く手を挙げれば、白髪の秘書官がゆっくりと腰を上げた。
「諜報部の3月補正予算で計上されたこの案件についてなんだが・・・。」
カガリの質問の内容を粒さに聴いた秘書官は、白く染まった眉を下げて笑みを零した。
思わぬ秘書官の反応に、カガリはきょとんと瞳を丸くした。
「代表、失礼いたしました。
就任当初から代表のお傍に仕えておりましたが、まさかここまで気付かれるようになられるとは・・・。」
ふーっと深い溜息をついて、秘書官は続けた。
「まるでウズミ様のようだと思い、嬉しくなりまして。」
するとカガリは、秘書官の深い皺が刻まれた手をぎゅっと握って微笑んだ。
「お前たちが、何度も何度も指導してくれたからだ。
感謝している。」
だが、と言葉を切って、カガリは厳しい表情で電子資料へ視線を向ける。
「まだまだ分からないことが多すぎる。
これからも厳しく指導してほしい。」
カガリの己を厳しく律する姿勢に頭が下がる思いで、秘書官は小さく頭を振った。
「ですが、この案件につきましては私では分かりかねます。」
カガリは、指摘が細かすぎたのだろうかと思案し、
後ろに控えていた新米秘書官に声を掛けた。
「モエギ、幕僚長と繋いでくれないか。」

ぴくり。

その時、不自然にモエギの肩が揺れたのをカガリは見逃さなかった。
手帳を繰る仕草でわたわたしているモエギに、いぶかしげに視線を送り、
カガリは白髪の秘書官へ問うた。
「モエギ、どうしたんだ?」
しかし白髪の秘書官も、困ったように柔らかく微笑むだけ。
そして、モエギはたどたどしくカガリに告げた。
「大変申し訳ございませんが、幕僚長は会議中のようでして・・・。」
うん、と頷いて、カガリは同部署の管理職の名前を次々に挙げていく。
しかし、ことごとく彼等は会議中であったり、外出中であるとのモエギの返答に、
カガリの眉間の皺が深まっていく。
机の上で握られた拳はふるふると震えているのを見て、
白髪の秘書官はカガリの爆発に備え、若干間合いを取った、
その時だった。

「・・・つまり、
軍の上層部は、今はすっからかんということだなぁっ!!!」

――全く、有事の場合はどうするつもりだっ。
危機管理体制を見直さなければ。

カガリが直接キサカの携帯用端末へつなげようとした時、
モエギは猛突進し、カガリの手を両手で掴んだ。
「カガリ様っ!!!」
モエギの声は裏返り、真っ青な顔をしながらも額に不自然な汗を浮かべていた。
「なっ、何も、今お調べにならなくともっ。
ほら・・・お時間もたっぷりありますしっ!!」
モエギは引きつった笑みを浮かべながら懸命に言葉を紡いだ。
そのあからさまに不可思議な態度に、カガリは疑念を抱かずにはいられなかった。
もしかしたら、組織ぐるみで何かを隠そうとしているのかもしれない。

――恐らく、私のために・・・。

カガリはすっと視線をモエギに当てた。
職権乱用だが、仕方が無い。

「モエギ。」

そう呼びかけるだけで、手を掴んでいるモエギの掌から震えが伝わってきた。
が、モエギには可愛そうだが、カガリは一歩も引く気はなかった。
モエギを捉える琥珀色の眼光に鋭さが増し、
射抜くような眼差しを向けた。

「代表首長の権限によって命ずる。
上層部は、今何処で、何をしているか、
答えよ。」



②へ続く・・・
 



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